私は呪われている (ミステリ珍本全集06) の感想

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参照データ

タイトル私は呪われている (ミステリ珍本全集06)
発売日販売日未定
製作者橘 外男
販売元戎光祥出版
JANコード9784864031301
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

これが率直な感想です。
「発酵人間」「死の快走船」に続く私にとっては三冊目のミステリ珍本全集購入本。
他の方もおっしゃるように、よくこの時代にこの内容(特に双面の花嫁)で復刊してくれました。
人権団体?なんぼのもんじゃい!のスタンスが素晴らしい。それとも当時の認識が間違っていることが今はわかっているからこそ、つまり平成の時代だからこそ、できたことなのでしょうか。どちらにしろ出版社のご英断は素晴らしい。

発酵人間のレビューでも書きましたが、小2の時に読んだポプラ社版、江戸川乱歩の明智シリーズをドキドキしながらページをめくった興奮が味わえます。少年探偵団物はポプラ社から復刻版も出始めていますが、いわゆる比較的「健全」なものしか選ばれていない。「一寸法師」や「赤い妖虫」なんてのは選ばれないんだよねぇ。

翻訳ものでよくみかける、当時の挿絵も掲載され、向こうにひどいことが待ち受けていると分かっていながら、そーーっと扉を覗く感覚が味わえます。

橘先生はもちろん、ありがとう、他のレビューの方、ありがとう、日下三蔵先生、そして何より出版に携わったすべての皆さんありがとう。

ところで作者の名前って無理やり音読みすると・・・なんですけど、本名なんですよね。

好きな作家が貶されいると正直へこむときもあるけど、こういった、知っている人は知っている、でも知らない人はきっと一生知らないであろう作家の作品だと、人種差別だの女性の権利だの今の科学に照らし合わせると・・・、作者の言いたいことが分からない、などなど、的外れもいいとこのレビューがないだけでもありがたい。

自主規制病に侵された平成の世において、よくも「双面の舞姫」を偕成社版単行本の伊勢田邦彦による挿絵まで併せて復刻したものだなと思う。
異臭を放つが如き橘外男のあくどい一面~醜い獣人による美女誘拐蹂躙~を披露せしめるこの長篇は次のような変遷を経ている。
■「青白き裸女群像」(舞台=海外/大人もの) 昭和25年刊  『陰獣トリステサ』(平成22年刊/河出書房新社)に収録

■「双面の舞姫」(舞台=日本に改作、少女雑誌に連載) 昭和29年刊

■「地底の美肉」(「双面の舞姫」を大人ものへ再びリライト、終盤の展開が一部異なる) 昭和33年刊

普通なら大人ものの「地底の美肉」を採るところを、元本のレア度と古本市場での需要を考え「双面の舞姫」の方を本巻に収録したのは五月蠅い読者への実に機敏な配慮。
『論創ミステリ叢書』に欠けているのはこういうところなんだよね。
詳しくはバラせないが、「地底の美肉」「青白き裸女群像」より控え目とはいえ胸の悪くなるような素材が扱われている、そういう意味での問題作だと警告しておく。

もうひとつの伝奇怪談長篇「私は呪われている」はいわゆる怪猫もので最晩年の作。山陰地方の廃寺に迷い込んだ学生が狂死、更にまた別の犠牲者が…。
当然オソロシイ調子で物語は現代での事件から時を遡り、あの「八つ墓村」にも比すべき80年前の残虐な因縁話へと雪崩れ込む。
悲劇の若君・八千丸が惨殺された後それまでのオドロオドロしさの中に時々なんとなくコミカルさが混じるのはユーモア物も手掛けた外男ゆえ?
最後に再び話は現代へ戻り、怨霊が狂死者を祟る理由付けがやや遠かったり、260頁あたりで語り手が謎の解明を完全にやりきらないのがちょっと雑でもある。
でも偕成社版『双面の舞姫』に併録されていた「人を呼ぶ湖」も含め、前巻の高橋鐵にあったリーダビリティー不足を感じず厭きる事なく一気に読み通せるのが強みでもあり、
本巻は橘外男を読む入門一冊目としても取っ付き易くて良いセレクトだなと思った。「蒲団」「逗子物語」しかり海外よりも日本が舞台の作のほうが私は好きだ。

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