蕎麦屋のしきたり (生活人新書) の感想

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蕎麦の薀蓄本は数あれど、大半が自称蕎麦通の、要するに「食べるだけ」もしくは「趣味で打つだけ」の評論家によるもの。そこへいくと、本書のように蕎麦職人にして老舗4代目当主が自ら語るのは稀だ。やっぱり当事者の言うことには深みがある。

昭和5年生れの著者の体験のみならず、祖父や業界の先達からの聞き語りも豊富なので、およそ明治開闢以来の東京の蕎麦事情がわかる。本文はどこを切っても面白く興味深いが、巻末に設けられた用語集が、これまた蕎麦好きには大いに参考になる。それが「用語・隠語・口伝解説」と題してあるのも本書のウィットを端的に示す。