シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325)) の感想

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参照データ

タイトルシュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))
発売日販売日未定
製作者ハインリッヒ・シュリーマン
販売元講談社
JANコード9784061593251
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 歴史・地理・旅行記 » 紀行文・旅行記

購入者の感想

シュリーマンについては、中学生のころ、トロイア遺跡の発見発掘者として社会科で習った記憶がある。
本書をもっと早く読みたかったが、色々な事情で今日まで遅れてしまった。

本書は150年前の清国と日本の姿を生き生きと描いている。
最初に訪れた清国では天津と北京について、書かれているが、清国の街や人々の不潔さにはほとほとあきれたようだ。
その不潔さの中、清国の食べ物を食べ、滞在してよく病気にならなかったと感心する。
しかし、万里の長城の壮大さや、そこからの眺めについては絶賛しているから、別に人種的偏見の持ち主でもない。

そのあとで訪問した日本は、清国と対照的に世界中で一番清潔な国と思ったようだ。
また、日本の生活の無駄の無さにも驚いている。
たとえば日本には家具というものが一切ない、とされているが、本当にそうなら江戸時代の人々はどうやって収納していたのだろうか。
押入れはあったろうから、その辺は見落としていたのかもしれない。
食事は畳の上に座って直に食べているように書いてある。お膳のようなものは見なかったのだろうか。
いまでいう公衆浴場では男女混浴に驚いているが、それを野蛮な風習とは見ないで、世界には異なる文化が存在する証左と受け止めているようだ。
当時の江戸でも外国人の姿は珍しく、彼ら外国人が通ると人の山が出来るが、風呂屋から真っ裸で男女が飛び出してきて恥ずかしそうにもしていない。
そもそも、一般の日本人男性は裸に下帯一本で生活しており、なかには全身に見事な刺青をしているものもあり、基本的には裸に羞恥心はない国と感じたようだ。
彼を守ってくれる幕府の役人たちも謹厳実直・清廉潔白を絵に描いたような人々ばかりである。
腐敗した清国から日本に回ったシュリーマンの眼には、ことさら日本人の生活の清潔さ、効率の良さ、まじめさが目に付いたのかもしれない。

最近はテレビなどで訪日外国人に日本の良さを語らせる番組がことさら多くなったような気がする。
しかし、150年も昔から訪日外国人は日本の良さに驚嘆していたことを、われわれ日本人は誇りにおもってよいのではないだろうか。

 1865年、江戸末期の日本。当時の日本について私がおぼろげに知っていたことは、教科書に書いてある非日常的なことや、時代小説の中の想像の世界に限られていました。
 しかし、シュリーマンが書いたこの旅行記は、私達を生きた江戸時代へそのまま運んでくれる、まさにタイムマシンです。秀逸な和訳(原文は仏語)による所も大きいのでしょうが、細やかで読みやすい描写が当時の日本人の息づかいや体温まで生き生きと感じさせてくれます。

 日本を訪れたことのある知人達から何度もその素晴らしさについて聞かされていた著者は、日本へ行くことを永年夢見ていました。類まれな商才と語学力を生かし、やがて世界をまたにかける貿易商として成功、巨万の富を築きます。
 そして、その潤沢な資金を元に、43歳の時に世界漫遊の旅へ出発し、ようやく念願の日本へ。
 今この稀少な見聞録を手にしている私達にとって幸運だったのは、この著者が旺盛な好奇心、執拗な探究心、さらに異文化を暖かく受け入れる広い心の持ち主だったことです。

 日本に滞在した期間はほんの1ヶ月程度だったようですが、その取材力と行動力は驚嘆に値します。聞くもの見るもの全てに興味を示し、それらをなるべく克明に記録に残そうとしています(雑貨類の細かい寸法まで!)。
 そして何より興味が尽きないのは、そんな著者の暖かい目に映った、純粋で愛すべき私達の祖先の姿です。貧しいながらも清潔で配慮の行き届いた生活ぶり、外国人である著者に無邪気な好奇心をあらわにしつつも懇切丁寧に接する町の人々、また決して賄賂を受け取ったりしない高潔な役人たち。
 銭湯が全て混浴で、性に対して大変おおらかな国民性に著者が新鮮な驚きを感じるあたり、いつしか自分もこの外国人著者と同じ視点に立ち驚きを共有していることに気づかされます。

 そして読後に残る、心の痛み。それは、かつて存在したそんな日本と日本人の美徳に対する喪失感に他なりません。

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