漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫) の感想

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参照データ

タイトル漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)
発売日2014-04-10
製作者西 加奈子
販売元幻冬舎
JANコード9784344421844
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » な行の著者

購入者の感想

西加奈子氏の本を読むのは初めてなのはおろか、西加奈子と言う作家さえ知らずにおりました。読んだ理由は楽屋落ちなので控えますが。

装丁には著者本人による印象的なイラスト。全裸で眠る女性に只ならぬ雰囲気が。そして本の裏表紙にはサリンジャーなんて言葉が。ん、油断しちゃいかんな、こりゃ、と思いつつ読み始めると、なんじゃこりゃ? 面白い! 面白いが、いやはや、これはナンセンスギャグ小説なのか?

いえいえ、主人公の眼を通して物語は進み、少しずつ少しずつその世界の色が変わって行きます。サリンジャーなどと言う単語がちりばめられていた理由が解ってきます。大人になる前、奇跡の様な輝きを放つ一瞬を鮮やかに紡いで物語は終わります。

小説としての技巧や難しい事は僕にはわかりません。でも、物語の終わり、泣かされました。40代のオヤジから涙を溢れさせる著者の力量には感服です。

寓話なので、物語のディテイルや人物描写に現実味が無い、なんてことは全く気になりません。あくまでもファンタジー。でも、虚の中にこそ実が在る、そんな言葉を思い出しました。登場人物を暖かく見守る視線に著者のこの物語に込めた想いが感じられました。

あとがきに、この物語が生まれた背景が綴られています。東北の街々を襲ったあの災害と無縁では無かったと言う事もあり、この本には特別な何かがある様な気がします。

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