サイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3)) の感想

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参照データ

タイトルサイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3))
発売日販売日未定
製作者近藤 紘一
販売元文藝春秋
JANコード9784167269036
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

戦争時の市内の様子を見た日本人が書いた本。現地に住まないと知らないことばかり。

 ベトナム戦争の終結であるサイゴン陥落迄の約2週間を追ったドキュメント作品である。

 著者は当時サンケイ新聞のサイゴン特派員としてこの現場を報道し続けた人物である。本書が出版されたのは陥落後5ケ月というときである。当然、南ベトナム政権崩壊の模様も臨場感をもって描かれている。

 しかし、本書は所謂ベトナム戦争の批評本ではない。この戦争の詳しい暦史や南ベトナム支援した米、北ベトナムを支援した中ソへの批評も書かれていない。戦場の悲惨な様子も書かれていない。だから、本書でベトナム戦争の全様を知ろうとすると肩すかしをくうだろう。が、そんなことは本書の価値を減ずる要素ではない。それは他の作品で知ればよいのである。

 ここに書かれているのは、ベトナム人の視点からみたベトナム戦争とサイゴン陥落の様子である。著者は彼ら(一般庶民も軍人も政府高官も全て含めて)の民族性あるいは文化を理解し、彼らの視点からこの戦争の姿を描き出している。

 しかし、著者は彼らを理解し受け入れても彼らの立場には立たない。あくまで「公平性」を貫いている。この姿勢が本書を優れたドキュメント作品としている。

 著者はサイゴン特派員時代に娘連れのベトナム人女性と結婚している。そして、彼女の多くの家族と一緒に暮らしていた。この結婚が本書をよりリアルにしたことは間違いない。

 彼はこの後、妻と娘を媒体としてベトナムあるいは東南アジアの国や人々を描き出す作品を発表してゆく。本書はその最初の作品である。

 著者の文体は新聞記者出身のノンフィクション作家としては他の作家のそれとはチョット異なる。いい意味で小説的ともいえる情感豊かな文章である。この文体があったからベトナム庶民の姿が生き生きと描かれたのだと思う。今読んでも決して色褪せてはいない。傑作である。

 

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