パロール・ジュレと魔法の冒険 (角川文庫) の感想

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タイトルパロール・ジュレと魔法の冒険 (角川文庫)
発売日2014-02-25
製作者吉田 篤弘
販売元KADOKAWA/角川書店
JANコード9784041012598
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パロール・ジュレ-誰にも届かなかった言葉が凍りつき結晶化したもの。キノフという気温の低い小さなこの街でのみ見られる現象だという。その秘密を巡って各国から諜報員が派遣され、街は「寒い国から来たスパイ」ならぬ「寒い国へ続々来るスパイ」の様相。そしてそのスパイを追う刑事、凍った言葉を溶かす4人の解凍士、謎の美女…とくるからなんだかとっても面白そう…。でも騙されてはいけない。ファンタジーというよりも幻想小説とかしこまって呼ぶ方が相応しい少し難解な物語。

架空の街キノフのある世界は、もとは一つの集合体だったものが「離別」し、今は小さな国々に分裂している(小さすぎて国と街はほぼ同義語に扱われている)。その設定はソ連連邦崩壊後の東の世界や旧ユーゴの国々を想わせ少し風刺的だ。「離別」の意味を人々が理解していればあんな事件は起きなかったのに、という作者の言葉が心に響く。読者はパロール・ジュレの秘密を追ううちにこの世界の内包する「昨日」に突き当たる。それは悲しかったり、残酷だったり、ほんのり暖かかったり、切なかったりする。

やがてパロール・ジュレが溶け、隠れていた言葉が浮かんでくるように、この物語も結末を迎える。読者は解凍された言葉は消えてなくなってしまうのではなく、それを聞いた人の心の中にじんわりと溶け込んで行くのだと知る。

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