差別の民俗学 (ちくま学芸文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 差別の民俗学 (ちくま学芸文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 赤松 啓介 |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480088949 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般 |
購入者の感想
赤松氏はいうまでもなく民俗学の泰斗だが、本書は期待を裏切らない濃い内容の論集である。
氏は戦中・戦後とみずから運び屋や、闇屋と思われる仕事、所謂流浪・底辺の生活をさまざまに経験した。研究対象は「柳田流」民俗学で愛された正規の社会制度の枠内で生きる農民よりももっと「得体の知れない」生活者たちである。その観察の視座には、彼らを研究対象と呼ぶにはもっと密着したものがあり、アカデミックで論理的・理想論的民衆像をしたたかにひっくりかえしてみせる。その一方、その文章の内には現代では懐かしさを覚えるほどの純粋マルキシズム精神を感じる。その意味では彼もまたある種の理想主義者であるように思われる(もちろんそこにこの作品の時代的限界を指摘する人もいるだろうが)。アウトローの世界を実体験から描く近年の著作者には宮崎学がいるが、彼のように主流を生きる人々へのアンチ意識をことさらに煽ることもない、淡々とした味わいがこの著作の持ち味である。
こうした内容とともに、正規日本語文法からは逸脱しているとすら言いたい独特の言い回しが、特に民俗学を専攻するものでないものをも力強く彼の世界へに引き込む好著でろう。
氏は戦中・戦後とみずから運び屋や、闇屋と思われる仕事、所謂流浪・底辺の生活をさまざまに経験した。研究対象は「柳田流」民俗学で愛された正規の社会制度の枠内で生きる農民よりももっと「得体の知れない」生活者たちである。その観察の視座には、彼らを研究対象と呼ぶにはもっと密着したものがあり、アカデミックで論理的・理想論的民衆像をしたたかにひっくりかえしてみせる。その一方、その文章の内には現代では懐かしさを覚えるほどの純粋マルキシズム精神を感じる。その意味では彼もまたある種の理想主義者であるように思われる(もちろんそこにこの作品の時代的限界を指摘する人もいるだろうが)。アウトローの世界を実体験から描く近年の著作者には宮崎学がいるが、彼のように主流を生きる人々へのアンチ意識をことさらに煽ることもない、淡々とした味わいがこの著作の持ち味である。
こうした内容とともに、正規日本語文法からは逸脱しているとすら言いたい独特の言い回しが、特に民俗学を専攻するものでないものをも力強く彼の世界へに引き込む好著でろう。