一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 山本 七平 |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784167306052 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 軍事 » 軍事入門 |
購入者の感想
この本を読んで一番驚かされたのは、帝国陸軍といういわゆる「閉鎖的」「超保守的」「時代遅れ」と思っていた組織が、じつは日本の現代的な組織となんら変わらない組織だった、ということである。むしろ、より進歩したと思っていた現代の組織が、帝国陸軍の構造的欠陥を今に至るまでひきずっているのが驚きであった。
たとえば本書の中に、「要領」という言葉がしきりに出てくる。「要領」というのは、一言で言えば現場を知らない本社(本書では参謀)の指示を、いい加減な員数あわせですませることである。より具体的には、10門の砲をこの地点に、いついつまでに、という指令が来れば、それは極端にいえば砲だけを持っていけばいい。砲があっても弾がなければ大砲は撃てない。陣地として機能しない。しかしそれは帝国陸軍では問題にならない。なぜなら「10門の砲」という員数はあっているからだ。
また本書は、帝国陸軍が本気で対米戦を準備していなかったという、驚きべき事実を披露している。士官学校で教官が重々しく、「今日から対米戦に重点を置いて教育する」という。しかし照れくさそうに、「何を教えたらいいのか、実はわしにも分からん」と付け加える。そして陸軍はその最後に至るまで、陸軍全体の方針として、それまでの経験を踏まえて対米戦の戦略・戦術を大転換するということはないのである。しかし掛け声だけは、「対米戦!」と声を張り上げる。なんという形式主義なのか! そしてこの形式主義は、現代の日本の組織の中で、かなり多く見られるものではないか。
本書は多くの哲学的考察を含んでいて、著者の教養の深さと、戦争という非常体験を通じていろいろなことをお考えになったのだろうということがひしひしと感じられた。後世に生きる私たちの使命は、本書から少しでも知恵を得、現在に至るまで日本社会に潜む構造的欠陥を、少しでもなくしていくことだろう。
たとえば本書の中に、「要領」という言葉がしきりに出てくる。「要領」というのは、一言で言えば現場を知らない本社(本書では参謀)の指示を、いい加減な員数あわせですませることである。より具体的には、10門の砲をこの地点に、いついつまでに、という指令が来れば、それは極端にいえば砲だけを持っていけばいい。砲があっても弾がなければ大砲は撃てない。陣地として機能しない。しかしそれは帝国陸軍では問題にならない。なぜなら「10門の砲」という員数はあっているからだ。
また本書は、帝国陸軍が本気で対米戦を準備していなかったという、驚きべき事実を披露している。士官学校で教官が重々しく、「今日から対米戦に重点を置いて教育する」という。しかし照れくさそうに、「何を教えたらいいのか、実はわしにも分からん」と付け加える。そして陸軍はその最後に至るまで、陸軍全体の方針として、それまでの経験を踏まえて対米戦の戦略・戦術を大転換するということはないのである。しかし掛け声だけは、「対米戦!」と声を張り上げる。なんという形式主義なのか! そしてこの形式主義は、現代の日本の組織の中で、かなり多く見られるものではないか。
本書は多くの哲学的考察を含んでいて、著者の教養の深さと、戦争という非常体験を通じていろいろなことをお考えになったのだろうということがひしひしと感じられた。後世に生きる私たちの使命は、本書から少しでも知恵を得、現在に至るまで日本社会に潜む構造的欠陥を、少しでもなくしていくことだろう。