人間・この劇的なるもの (新潮文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 人間・この劇的なるもの (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 福田 恆存 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101216027 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » 文学・評論 |
購入者の感想
人間の社会性というものは演技性を多分に含んでいるのではないか、との疑問がわき、アマゾンを検索して本書を購入した。福田恆存という人は、氏訳の新潮文庫の「ハムレット」と、小林秀雄氏との対談を読んだことがあるため、名前は知っていた。
本書の一章と二章で、私の冒頭の疑問は肯定的に解消された。すなわち、人間は演技するものであると。
三章以降は、おもにシェイクスピアの「ハムレット」を題材として論が展開される。
全編を通して、論じられるテーマは人間の『死生観』である。死生観、とくに『死』を通じて、人間がいかに劇的な存在であるかが論じられる。
本書を通じて、私自身の社会性(=演技性を含むもの)が向上していくことを望む。
『愛は自然にまかせて内側から生れてくるものではない。ただそれだけではない。愛もまた創造である。意識してつくられるものである。』(本書冒頭より)
本書の一章と二章で、私の冒頭の疑問は肯定的に解消された。すなわち、人間は演技するものであると。
三章以降は、おもにシェイクスピアの「ハムレット」を題材として論が展開される。
全編を通して、論じられるテーマは人間の『死生観』である。死生観、とくに『死』を通じて、人間がいかに劇的な存在であるかが論じられる。
本書を通じて、私自身の社会性(=演技性を含むもの)が向上していくことを望む。
『愛は自然にまかせて内側から生れてくるものではない。ただそれだけではない。愛もまた創造である。意識してつくられるものである。』(本書冒頭より)
昭和期を代表する文芸評論家の一人である氏の、評論の代表作といえる作品である。
氏にはシェイクスピアの翻訳を中心とした演劇関係の業績も多いが、本著は「演ずる」ことをテーマに、
文芸・演劇評論から文明論へとその視野を一気に飛躍させた論陣を展開している。
そこには、自由と平等、人権といった近代的諸価値、あるいはヒューマニズムとは全く異なる立場からの、
「演劇」=「擬制」としての人間社会、なかんずく人間存在への理解が貫徹されており、
戦後社会を支配した諸価値に対する強烈な懐疑と抵抗が敢然と示されている。
この様なささやかな文庫には収まりきらない叡智の塊が垣間見える一作であり、
是非ともこれを機に、氏の言論に一つでも多く触れてほしいものである。
唯一残念なのは、現代語表記になっていること。
戦後改革、特に国語「改革」を徹底的に批判した氏の文章は、やはり正字正仮名で書かれてこそ、
故人の真意に適うと思うのだが、如何だろうか。
氏にはシェイクスピアの翻訳を中心とした演劇関係の業績も多いが、本著は「演ずる」ことをテーマに、
文芸・演劇評論から文明論へとその視野を一気に飛躍させた論陣を展開している。
そこには、自由と平等、人権といった近代的諸価値、あるいはヒューマニズムとは全く異なる立場からの、
「演劇」=「擬制」としての人間社会、なかんずく人間存在への理解が貫徹されており、
戦後社会を支配した諸価値に対する強烈な懐疑と抵抗が敢然と示されている。
この様なささやかな文庫には収まりきらない叡智の塊が垣間見える一作であり、
是非ともこれを機に、氏の言論に一つでも多く触れてほしいものである。
唯一残念なのは、現代語表記になっていること。
戦後改革、特に国語「改革」を徹底的に批判した氏の文章は、やはり正字正仮名で書かれてこそ、
故人の真意に適うと思うのだが、如何だろうか。