ティムール帝国 (講談社選書メチエ) の感想

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タイトルティムール帝国 (講談社選書メチエ)
発売日2014-04-25
製作者川口琢司
販売元講談社
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 一代にして大帝国を創りあげたティムールは、現在のどの民族にも直接結びつきません。
 彼の首都(のひとつ)だったサマルカンドのあるウズベキスタンは、昨今盛んに彼を顕彰しています。が、ウズベグ族はむしろ彼の帝国を滅ぼした側に立ちます。彼は広義のイーラーンを統一していますが、間違いなくペルシア系の人物ではありません。そしてなにより、遊牧君主やモンゴルの大ハーンとは異なり、季節移動を繰り返す首都圏を擁しているような形跡はうかがえないと本書はいいます。
 中央アジアでモンゴル系がテュルク化した「チャガタイ人」であるティムールは、チャガタイ・ウルス(チャガタイ=ハン国)の分裂の状況の中から頭角を現し、マー・ワラー・アンナフルの地(一般的にはアラル海に注ぐアム川とシル川の間の地方)に政権を立てると、その後は遠征に次ぐ遠征のうちに生涯を送ります。
 本書では謎多い彼の前半生と、遠征の歴史、そして数多くの土木建築をおこなった帝国の統治について、同時代の一次史料を紹介しながら記述しています。また、ティムールの後継者を任じていた孫の四代皇帝、ウルグ・ベグの事績についても言及します。
 ティムールは、チャガタイ家のチンギス裔こそモンゴルの正当な主(といいつつも実際に担いだのはなぜかオゴタイ家のチンギス裔)であり、失われた帝国の再建のためと称して広大な地域を駆け回りましたが、彼自身も過去の偉大な征服者達に倣っていたと著者はいいます。また、「農耕=遊牧境域地帯」の都市の住民でありつつも祖先の遊牧民の心象も尊重した、としています。
 中央アジアやモンゴル帝国に関する予備知識がないと若干読みづらいかな、と思われますが、一般向けでは珍しいテーマでもあり、じっくり読みこなしたい一冊です。

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