本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人 の感想

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参照データ

タイトル本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人
発売日販売日未定
製作者大塚 ひかり
販売元新潮社
JANコード9784103350910
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究

購入者の感想

軽い読み物としては、ありです。
筆者の現代の方がマシという言いたいことは、伝わってくる内容です。

 私たちは、ともすればさしたる根拠もなく、「昔の日本は、今のように便利な電化製品や豊富なモノにあふれていたわけではないが、家族や地域の絆は強く、心は満たされていた」というような「昔はよかった」風の考え方をとってしまいがちです。
 しかし、この本を読めば、そんな幻想は一挙に崩れ去り、「なんという厳しく、生きるのが大変な時代・・・・」ということがわかります。捨て子、育児放棄、児童虐待、もろい家族関係、妊婦イジメなどなど、せちがらく、残酷、残虐な話がけっこう出てきます。私は正直、「妊婦イジメ」の話のあたり(200ページ余りの本書の約3分の1ぐらい)で、だんだん気分が悪くなってきました。
 なので、この本はあまり読んでいて気持ちのよい本ではありません。「ちょっとエグイな」という感じです。

 しかし、その反面、昔の日本の社会・家族関係について、「なるほどねえ。そんな時代だったのか。」という感じで認識を新たにできる本です。私にとっては、あまり、これまで読んだことがない古典作品も紹介されており、新たな知識を得られました。
 人によっては「ちょっと、この本はしんどい」と思うかもしれませんが、ある種、興味深い本であり、これまであまり読んだことのないタイプの貴重な本です。一読の価値がある本と思います。

アマゾンページ(この上の方)の「商品の説明」に依れば、本書は古典文学に見える当時の価値観の「残酷」性が多少強調されているように思う。著者は確かに古典文学に見える当時の民族性や価値観、殊にそのネガティブな面を実証的に検証している。しかし単にかかる「残酷」さや価値観を悲観するというのではなく、(私見ではあるが)懐古主義の「幻想」を明らかにしつつ現代の犯罪事実や風潮と重ね合わせることで、現代社会に対する警鐘を訴求しているように思う。そしてそれらの「残酷」性や価値観を全否定するのではなくて、懐古主義は「幻想」であっていにしえの「したたかさ」を知り「肩の力を抜いて」現代社会を生きるべきというのが(「あとがき」参照)、著者のスタンスだろうと推察する。

その著者のスタンス(懐古主義消極観)故に、凡そトピック毎に現代社会の現象を提起しこれとの相対性にも(著者の価値観に基づいて)言及するという形式を採っている(「捨て子」、「夜泣き」、「貧困ビジネス」、「妊婦いじめ」、「さんせう太夫」ほか)。右形式の評価は分かれるだろうが、著者のスタンスにあまり拘らずに、純粋に古典の伝える当時の民族性・価値観の現れとして読むという方法もあろう。私は右のような読み方の方が「肩の力を抜いて」楽しめる一冊とも思う。

本書の構成・内容は15章構成で、『源氏物語』、『うつほ物語』、『日本霊異記』、『古事記』、『枕草子』、『宇治拾遺物語』などの著名なものが多く考察対象となっている。これら古典から先述のように、「捨て子」、「虐待」、「ストーカー殺人」、「毒親」、「動物虐待」ほかのトピックを引用・参照しつつ、他者の論考・考察も踏まえながら実証的に論を進めていくもので、史論としても本格的な体裁を整えているため信頼性が高く、また後注等を用いずに本文内で展開する工夫に好感が持て読みやすい。また少年犯罪との関連(『源氏物語』や『酒呑童子』などに見えるトピックから)で、律令制ほか当時の法制度にも論考が見えて興味深い(142〜150頁)。

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