雪崩リスク軽減の手引き―山岳ユーザーのための の感想

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参照データ

タイトル雪崩リスク軽減の手引き―山岳ユーザーのための
発売日販売日未定
製作者特定非営利活動法人『日本雪崩ネットワーク』
販売元東京新聞出版局
JANコード9784808309411
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 地球科学

購入者の感想

これまで,日本語で刊行されてきた多くの雪崩に関する図書は,雪に関するもの,もしくはセルフレスキューに関する部分を中心的に扱ってきたものではなかろうか.本書の特徴は,こういった雪氷学的観点や雪崩事故後の対応に軸足を据えるのではなく,あくまでも雪崩というリスクにどう対峙し,そのリスクをどうやってコントロールしうるかを端的に,わかりやすく解説している点で,新たな視点を読者に与えてくれる良書である.

本書はB5サイズの96ページ,8章構成で,これから雪山に入ろうと興味を持っている方はもちろん,すでに経験を積まれている方にとってもすぐに読め,実践できる理論と知識が満載である.また,節ごとに要点が3点ずつ提示され,重要な段落に目印が付いているため,雪山経験者はもちろん,雪山に興味のある方でも読みやすい構成となっている.

著者は,雪崩のリスクコントロールを重視し,それを地形の理解と行動選択で実現するよう山岳ユーザーに迫る.この意味することを本書で理解し,各地で実施されている雪崩講習会で経験を積むことが,雪崩事故に遭遇せず,雪山を楽しむ第一歩になるであろう.

雪崩というと、アカデミックな学問の方向に流れるか、
「総合的な感覚が大事」といった体感論にとかくなりがちであるが、
この本では「現場プロが実践」という、地に足がついた具体的内容が展開されている。

まず、雪崩の危険がある「地形」についての詳細な記述は秀逸である。
「地形」を理解し行動することが、雪崩のリスクを低減する為にいかに重要であるかを
繰り返し丁寧に説き、更にフィールドでのリスクマネジメントへと発展させている点が
素晴らしい。

また、斜面の雪は雪崩を起こしうるのか? という我々最大の関心事に対して、
「積雪の不安定性評価」という言葉を提示し、その概念と目的、使用するデータ、
そして実際の例が書かれており、抽象的になりがちな雪の安定性について
分かりやすい記述がなされている。

ただし、レスキューに関しては、掘り出しで終わっており、その後の搬送等については、
別書籍等が必要であろう。

バランスの取れた構成と明快な文章、そして原則的な事項を大切にした記述の確かさは、
両著者が所属する日本雪崩ネットワークのこれまでの活動内容と実績を考えれば
うなずけるところである。
他団体においても、この本を採用することによってより充実した雪崩講習会の開催と
実践に即した理解を深めることができるだろう。

他の雪崩本や雑誌で見かける記事と比べ、それらとの質の違いは歴然である。
餅は餅屋といったところか。
どれが本物か?見抜けるか否か、ユーザーの側も問われていると言える。

手元に置いておいて損はない一冊。

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