昭和の妖怪 岸信介 (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル昭和の妖怪 岸信介 (中公文庫)
発売日2012-11-22
製作者岩見 隆夫
販売元中央公論新社
JANコード9784122057234
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

これは、政治評論家・岩見隆夫氏が70年代に岸の関係者を取材し、昭和の宰相・岸信介の実像をあぶり出そうとした本。
今にして思うと、関係者がぎりぎり生きていた時期の貴重な証言だと思います。知らなかったエピソードも多く、興味が尽きない。

例えば、岸が商工省の役人だった頃、あの吉野作造氏の実弟と同じ商工省で懇意にしていた話等、先ず、近現代史の授業でも習わないと思います。
満州国時代は、この当時、満州を牛耳っていた5人の実力者、ニキ三スケ(東条英機・星野直樹、松岡洋右・鮎川義介、そして岸信介)の相関関係がとてもよく分かる。

特に、岸の縁戚で、当時、満鉄総裁だった松岡との関係性や、関東軍の掌握の仕方、日産の鮎川を満州実業界に引っ張り込む場面などは迫力がある。
満州経営で自信をつけた岸は日本に帰国し、本格的な政界進出を計る。しかし、程なくして敗戦。A級戦犯容疑者として巣鴨拘置所へ収監される。

そして釈放。物足りないと思ったのはこの部分。岸はなぜ逆コースで不起訴となったのか。現在でも謎が多い部分で、最近になって米側が公開した文書を見ても今一つよく分からない。その後、鮮やかに政界復帰を果たした岸。しかし、当初は社会党系の政治家と連携するなど、試行錯誤もあった。

保守合同、首相への就任。安保改定から退陣へ。非常に迫力のある場面です。岩見氏は、岸に対して厳しい視点で臨んだようだが、岸の政治家としての人脈の広さ、積極性、豪胆さには敬意を払っているようにも見える。しかし、岸の金の問題、とりわけ、満州での部分はよく分からないといった感じ。

安保改定の混乱の中、不運にも命を落とした、女子学生・樺美智子の父親や、その事で義憤に駆られ岸を刺した暴漢にまで取材しているのは、岩見氏のジャーナリスト魂を感じる。報道記者の鑑だと思います。また、岸の安保改定は、孫の現・安倍政権の安保法制との比較で見るとより分かり易いと思います。

岸は明確に対米自立を訴えたが(その部分は高く評価出来る)、安倍政権の方はその部分がはっきりしない。安保法制が、対米追従をより一層深めるためのものだとしたら、それは国民の理解の得にくいものになってしまうと思います。

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