アセンブリ ―行為遂行性・複数性・政治― の感想

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参照データ

タイトルアセンブリ ―行為遂行性・複数性・政治―
発売日販売日未定
製作者ジュディス・バトラー
販売元青土社
JANコード9784791770458
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学

購入者の感想

「アラブの春」における大衆示威運動に触発されたバトラーの政治理論集であり、人間の集合性=アセンブリの意義が論じられている。集会に集合する無数の人々の反乱が単なる示威ではなく、多様な価値観を持つ人々が集まり、「使い捨て可能ではない」身体の顕現性による生存の主張を行うからこそ、共生に向かう社会変容の可能性を持つのだと熱く語るバトラーの言葉は、個人的には力強い説得力を感じるものがあった。しかしながら読後感としては、本書の主張からはやや外れるが、従来、難解晦渋で知られてきたバトラーの文体とは異なる、明快な論旨で全編が書かれており(初出が講演という性格もあるが)、自己と他者、そして集団における政治性といった倫理問題が、「行為遂行性」というバトラーの最も難解な哲学用語すらも、具体的な社会問題や身体性に還元しながら非常にわかりやすく解説されており、この書籍自体が、実は多くの人がアクセスしやすいように、気楽に集まれる集会所のように、最適なバトラー哲学の入門書として編集されたのではないかと思えてならない。収録された6本の論文は緊密に関連しながらも独立して読むこともでき、かつ、それぞれの論文がこれまでのバトラーの哲学的営為の累積を背景にした集合性を示している。例えば第1章ではジェンダー理論から出発したバトラーがより広範な倫理学を論じるようになった現在までの経緯を語る中で「ジェンダーは、人間の軌範的範疇と闘うあらゆる形式の存在の範例としては機能しえないが、権力、行為能力、抵抗について考える出発点を提示することはできる」と、ジェンダー理論の有効性をあらためて説明していたり、第3章以降では他者への応答責任性について『自分自身を説明すること』等に関連した思想が展開されていたり、また全論文の根底には『生のあやうさ』から論じられ続ける、生の「不安定性」による警鐘が基調を成しており、本書はそれらをわかりやすい明快な論旨で結んだ、入門書としても十分に理解できる、バトラー哲学の過去と現在の総体を示すアセンブリ/集合体となっている。バトラーの強靭でしなやかな思想が幅広い読者に向けて開かれた、新たな名著だと思う。

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