幻想の未来/文化への不満 (光文社古典新訳文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 幻想の未来/文化への不満 (光文社古典新訳文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ジークムント フロイト |
販売元 | 光文社 |
JANコード | 9784334751401 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 » 心理学入門 |
購入者の感想
晩年のフロイトが、西洋文化とりわけその中心にあるキリスト教を、精神分析の視点から批判した書。「文化」とは、人間が自分の動物的で盲目的な欲望をコントロールするための、自己調教装置の総称である。その中心は道徳や宗教であり、幼時から人間に欲望の断念と社会規範を脅迫的な形で刷り込んでゆく。神経症とは、このような規範が動物的欲望を抑圧するところに生み出されるきわめて人間的な現象なのだ。フロイトは、文化、芸術、宗教のすべての現象の中に、この神経症的症状を読み解いてゆく。中山氏の新訳は、論旨の骨格を浮かび上がらせて、切れがよい。旧訳と比べよう。「芸術は、文化の要求に応じて我々が行ってはいるものの、魂のもっとも深い部分では今なお未練を残している最古の願望断念に対する代用満足であり、したがって、この願望断念のために捧げられた犠牲から生まれる不満をなだめるには、一番適している」(人文書院版著作集3)。「芸術とは、ごく原初的で、今なお人間のもっとも深いところで感じられる文化による放棄の命令の代償としてもたらされる満足であり、文化のために捧げられた犠牲との和解をもたらすものに他ならない」(中山訳、p28)。