日本の歴史21―近代国家の出発 (中公文庫) の感想

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タイトル日本の歴史21―近代国家の出発 (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者色川 大吉
販売元中央公論新社
JANコード9784122046924
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

1960年代半ばにもともと書かれただろうこのシリーズは、他の方も指摘しているように、今の時点から見るとかなり左寄りの視点だ。ただ、それでも、大変詳しい叙述で、近年の本では詳述されにくい話題なども詳しく扱われている部分がある。自由民権運動や、農民やジャーナリストの活動などを、相当意義深い活動であったように強調されて取り扱っているように思える箇所がある。政府のほうは、まだ憲法もなく議会もない時代にあって、欧米列強の様子を学んでいる中心人物たちにとっては、それらのすべてに対応するのは、不可能に近かっただろう。国際情勢を詳しく知る農民やジャーナリストが、殆どいないに等しい時代にあって、彼らの要求はあまりに素朴で、政府などを突き動かしてはいないように見える。徳川幕府の長い眠りから覚めるのは、本当に大変だったと思われる。結局は、元大名クラスは生活を保障されるが、多くの士族は仕事にもあぶれたままであったようだ。農民も豪農は生き延びても、小作などの農民の生活レベルを上げるには、まだほど遠い時代だったことがわかる。豪農でさえ、自由民権運動に加担した場合があっても、横のつながりを持ちつつ連携できるような人物はあまり登場してこない。元士族の不満分子や不満農民たちの活動は、本書の詳しい記述にもかかわらず、多くは失敗に帰している。国際情勢を知りつつ国内活動ができるような水準の指導者が育っていなかったように思われるのだ。

逆に、政府の要人は大したことをしなかったかのように、書きたてられる場合が目立つが、例えば、伊藤博文の長きにわたる活動は、近年発表された伊藤 之雄氏や瀧井一博氏などの著作と比較すると、本書の伊藤博文の章では、伊藤博文の成果を多面的に理解しているようには見えない時がある。明治天皇に関する叙述も物足りない。

それでも、この書は入院中に読んだ本のなかでは、1960年代(の歴史学の流れ)を振り返れた点、面白かった。当時はまだ私はこのシリーズのこのような書はとても読む準備も時間もなかったのだ。

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