朝ドラには働く女子の本音が詰まってる (ちくま新書) の感想
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参照データ
タイトル | 朝ドラには働く女子の本音が詰まってる (ちくま新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 矢部 万紀子 |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480071361 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 倫理学・道徳 » 倫理学入門 |
購入者の感想
タイトルが説明的すぎてちょっとシラケるが、本書は、「ちりとてちん」から「ひよっこ」までのNHK朝ドラの重要作品を分析したもの。朝ドラの魅力の源泉を、その主題、構成、俳優、そして名セリフなどから多面的に分析しており、優れた作品論になっている。朝ドラの一番大きな特徴は、それが、全体として、女性が生きることを励ますものになっている、という点にある。だからその内容には、さまざまなジェンダーの問題が深く、多面的に織り込まれている。朝ドラのヒロインに共通することは、子供の時から「おてんば」なことである。生き生きとした「おてんば」であることこそ、女性のもっとも素晴らしい美徳なのだ。何という卓抜な視点! これ以上、女性が生きることを励ますものはないだろう。朝ドラのヒロインは、実在の人物、それも成功した女性をモデルにしたものがかなりある。「カーネーション」は、ファッションデザイナーであるコシノ三姉妹を育てた洋裁師、小篠綾子。「花子とアン」は翻訳家、村岡花子。「あさが来た」は、日本女子大創立者、広岡浅子。「とと姉ちゃん」は、『暮らしの手帖』の創刊者、大橋鎮子。しかし、いわゆる「成功者」「勝ち組」の有名女性だけをヒロインにしているわけではない。著者によれば、「あまちゃん」と並ぶ大傑作である「ひよっこ」の主人公は、1964年に中卒で東京へ集団就職した少女であり、高学歴でもエリートでもない。「ひよっこ」はむしろ、競争社会を批判する視点から作られており、女性が働くようになって、男性と同じようにキャリアの競争、出世競争になり、より高いポストに就く「勝ち組」になることではなく、一人の人間として「堂々と自分でいること」「自分を失わないこと」こそが、女性が「よく生きる」ことである。ヒロインのみね子は、まさにそのように成長してゆく。