アリババ 世界最強のスマートビジネス の感想

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アリババに関する書籍は数々あるが、本書の特色は、筆者が経営学者であり、かつ同社の最高戦略責任者を務めたこともあるという点にある。タイトルにあるスマートビジネスとは筆者の定義によるとネットワーク・コーディネーションとデータインテリジェンスを活用して顧客の要望に応えるというものであり、そこではあらゆる事業活動がソフトウェア化され、ビジネスプロセスもオンライン化、APIによってデータフローが関係者の間で円滑化されるものを云う。

アリババが創業されて20年、立上げ当初は中国の物流インフラの未整備もあり、オンラインでマッチングが出来ても同じ都市内での交換であったり、かなり原始的な取引形態だったと云われる。アリババのビジネスモデルはアマゾンのそれとかなり異なるが、その理由はジャック・マーが中国の商取引を円滑化させることを創業の志としていることにも起因する。B2Bに始まり、B2C、更には一定のブランド力を持つ売手と消費者をつなぐサービス、など、社会のニーズに応じてメニューを拡大して行った。

アリババのサービスで特徴的なことは、決済・エスクローの為にアリペイをつくり、物流機能を整備する為に菜鳥(ツァイニャオ)ネットワークをつくり、中国における商取引を円滑化する為のサービスを次々と拡充していったことにある。
アリババの戦略チームはプラットフォームと出店者の関係の本質を示す言葉として「enable」という言葉に行き着いたという。まさにアリババが創業時からやって来たことは「enabler」であったということを納得させられる一冊である。