ブラック・ジャック (1) (少年チャンピオン・コミックス) の感想

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手塚治虫、マンガの神様。
自身にとっての最高傑作『ブラックジャック』は、正しく少年期のバイブルでした。

ではＢＪがなぜ、バイブルとなったのか＿

ブラックジャックのキャラクター設定は、フランケンシュタインとドラキュラと
ジャックナイフ(法外外科医)の合成、つまりモンスターコラージュです。

ＢＪは驚異のメスさばきと機転で様々な境遇の患者を救います。彼もまたその幼少期に
爆発事故に巻き込まれ、近代医学によって救われた患者のひとりです。ＢＪ少年は、
その絶望的な状況から血の滲むようなリハビリに耐え、奇跡の復活を果たしました。

その生のさま、その生の本然に心底魅せられました。かつて患者として生き延びたＢＪは、
各話ごとにそういった患者たちと出会い、才気の限りに医術を施してゆきます。
ＢＪ、そしてそれを描く手塚治虫を支えるものは、生命存在の本然への信仰です。

そしてそれは云うまでもなく、様々な苦境に耐え、尚、希望を失わない患者たちの上にあります。
ＢＪのバイブルとしての本質とは、そんな患者たちの命(いのち)のありさまです。
それが仁術であるとしても、医術は断じて第一のテーマではありません。

本巻、第一話でＢＪの施したのはなんと美容整形術です。稀代の天才外科医の登場劇がそれです。
ブラックジャックの本テーマとは、ここに明瞭に示されています。
それは生命と倫理、なによりまた命の示す情愛がドラマの結びとなっています。

少年期にこの傑作をして、幾夜を泣かされたことでしょう。