大きな鳥にさらわれないよう の感想
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参照データ
タイトル | 大きな鳥にさらわれないよう |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 川上 弘美 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062199650 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者 |
※サンプル画像
購入者の感想
連作短篇のようなスタイルの作品だが、最初のうちは設定もよくわからないまま
狐につままれたような気分で読み進めていくうちに、徐々に作中で描かれた世界の
全体像がおぼろげに見えてくるという構成は、よく考え抜いて書かれていると思う。
ただし、他のレビュアーも指摘しているように、種明かしめいた説明がかなり明白に
書き込まれている箇所があり(「Remember」「運命」)、正直読んでいて白けて
しまったことは否めない。最初のほうで描かれる、植物的な生殖を続ける「母たち」
と女たちの共同体というイメージには、作者特有のひらがなと読点が多目でどこか
とぼけたような味わいの文章とも相俟って、うまく持ち味が出ていると思うのだが、
ハードSF的な「説明」が始まってしまうと、作者が本来忌避しているはずの痩せた
概念語が連発され、「そんなにストレートに書いちゃったら台無しじゃん・・」と
思わされることが多かった。
作者はもと理系で、SF雑誌にも関わっていたそうだが、この手の作品を書くには
それ相応の文体を開発する(あるいは、本来の文体でどこまでも曖昧に暈しつつ
押し通す)べきだったはずで、結局その点でいまひとつ成功していない、どこか
中途半端な作品と言わざるを得ないと思う。
狐につままれたような気分で読み進めていくうちに、徐々に作中で描かれた世界の
全体像がおぼろげに見えてくるという構成は、よく考え抜いて書かれていると思う。
ただし、他のレビュアーも指摘しているように、種明かしめいた説明がかなり明白に
書き込まれている箇所があり(「Remember」「運命」)、正直読んでいて白けて
しまったことは否めない。最初のほうで描かれる、植物的な生殖を続ける「母たち」
と女たちの共同体というイメージには、作者特有のひらがなと読点が多目でどこか
とぼけたような味わいの文章とも相俟って、うまく持ち味が出ていると思うのだが、
ハードSF的な「説明」が始まってしまうと、作者が本来忌避しているはずの痩せた
概念語が連発され、「そんなにストレートに書いちゃったら台無しじゃん・・」と
思わされることが多かった。
作者はもと理系で、SF雑誌にも関わっていたそうだが、この手の作品を書くには
それ相応の文体を開発する(あるいは、本来の文体でどこまでも曖昧に暈しつつ
押し通す)べきだったはずで、結局その点でいまひとつ成功していない、どこか
中途半端な作品と言わざるを得ないと思う。