海防艦三宅戦記―輸送船団を護衛せよ (光人社NF文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 海防艦三宅戦記―輸送船団を護衛せよ (光人社NF文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 浅田 博 |
販売元 | 潮書房光人社 |
JANコード | 9784769827993 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » ノンフィクション |
購入者の感想
「海防艦」という、一般にはあまり耳慣れない艦種名。一般的な駆逐艦の半分ほどの規模の船体に駆逐艦を上回る対空火力と対潜能力を持ち、しかし対艦能力はほぼ皆無、速力も最低限。本書の主人公たる海防艦三宅は、言わば駆逐艦から「船団護衛」と言う要素を抽出して造り上げた様な小型艦艇です。
国家の存亡を左右する海上輸送の守り手でありながら、華々しい活躍もない事からドキュメンタリーや小説などでも採り上げられる事の少なかった護衛艦艇。しかし、本書を読めば数多の巨艦、名鑑と同様に幾多の乗員や関係者たちが黙々と与えられた責務を果たし続けていた事を改めて認識させられます。著名な大作戦の裏側で、表には現れる事はなくとも輸送や支援に従事し続けた護衛艦艇たちの姿が描かれています。
既に他の方のレビューでも触れられ、また本書の後書にも記されている通り、本書は「海防艦三宅戦友会」の会誌を底本として纏められた戦記です。文章は平易で読みやすく、また奇妙に抒情的な描写に走る事もなく、あくまでも事実のみを淡々と記述しています。かと言って無味乾燥な文章ではなく、時折描かれる日常の風景や航海中のエピソードが軽いユーモアとともに記されていて、ほっとさせられると同時に乗員たちの強靭さにも思いが至ります。
本文の内容は昭和20年8月22日の時点で終了となっていますが、欲を言えばその後の引揚げ事業に特設輸送艦として従事した三宅のエピソードも読みたかった気がします。
国家の存亡を左右する海上輸送の守り手でありながら、華々しい活躍もない事からドキュメンタリーや小説などでも採り上げられる事の少なかった護衛艦艇。しかし、本書を読めば数多の巨艦、名鑑と同様に幾多の乗員や関係者たちが黙々と与えられた責務を果たし続けていた事を改めて認識させられます。著名な大作戦の裏側で、表には現れる事はなくとも輸送や支援に従事し続けた護衛艦艇たちの姿が描かれています。
既に他の方のレビューでも触れられ、また本書の後書にも記されている通り、本書は「海防艦三宅戦友会」の会誌を底本として纏められた戦記です。文章は平易で読みやすく、また奇妙に抒情的な描写に走る事もなく、あくまでも事実のみを淡々と記述しています。かと言って無味乾燥な文章ではなく、時折描かれる日常の風景や航海中のエピソードが軽いユーモアとともに記されていて、ほっとさせられると同時に乗員たちの強靭さにも思いが至ります。
本文の内容は昭和20年8月22日の時点で終了となっていますが、欲を言えばその後の引揚げ事業に特設輸送艦として従事した三宅のエピソードも読みたかった気がします。
海防艦三宅の行動を中心にその当時の日本の戦況等を客観的に描かれた戦記。戦局の場面も冷静に状況を描写しつつ、時折、何日も風呂に入れず疲労困憊した海防艦三宅乗りたちが、数十分のスコールを待ちわび、シャワーがわりに浴びた雨に生気を取り戻した、などの描写が入る。決して叙情的な書き方ではなく、あくまでも冷静な落ち着いた描写は、かえって過酷で残酷な戦争の様子が伝わってきた。