闘う力 再発がんに克つ の感想
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参照データ
タイトル | 闘う力 再発がんに克つ |
発売日 | 2016-03-25 |
製作者 | なかにし礼 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 登録されていません |
カテゴリ | 文学・評論 » 文学賞受賞作家 » 直木賞 » 101-125回 |
購入者の感想
<戦う力>で私は初めての読書体験を味わった。幼い時の<おやゆび姫>の絵本から始まって老年となり、人並みの読書量を重ねてきた中で~一気呵成に頁を繰る手が止まらないほどのスピードで読み切った。 なかにし礼が画期的な陽子線治療で食道がんを克服したのは知っていた。ところが今回の再発に対しては手術と抗がん剤治療に入ったと聞いて疑問と興味を持った。私自身も経験があるのでよく分かるが、がんは死と直接対決の毎日で常に再発に怯え、弱者になって周囲の人たちから遠く引き離されていくような寂寞感に襲われる不思議な病いだ。ましてや再発となるとなおさらだ。この本は生々しい実体験を赤裸々に緻密に冷静な分析描写で書かれた類をみない闘病記である。読んでみて3つのポイントがあった。1.手術の際医師がひらめきで行った処置を含む強力医師団の連携プレイと温かな家族の大いなる支え。2.<病気と闘っている自分とは別にもう一人の自分というものを作り出し、生み出した活力を自分自身に流し込むことで前むきになるために>小説を書くことを決心。それを幸せな仕事と言い切り実行。このような本人の強い精神力を自らを救うために起こした素晴らしい行動。3.陽子線という頼みの綱が絶たれ一時は延命措置でいこうとしたが医師団のなかにし礼を守ろうという情熱に押されて手術と抗がん剤治療に納得して踏み切ったこと。<常に死が迫っている状況下生きる方を選択し続けてきたのに過酷な治療により投げやりになってきた>危機に抗不安剤の助けを借りたこと。自身で出来得る事はすべてやり抜き、ときには現実を見据えてある限界を超えたら素直に現代医学に委ねたこと。 私はこの本を通して人生の良い指針を頂いた。 いまだ抗がん剤治療用のポートをつけているなかにしさんの小説から目が離せない~