発達障害 (文春新書) の感想

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タイトル発達障害 (文春新書)
発売日2017-03-17
製作者岩波 明
販売元文藝春秋
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カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

前半にて発達障害、特にASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如多動性障害)についてその内容と定義、
そして片方の症状故に副次的にもう片方の特徴によく似た症状が出るゆえに分かりづらい両者の違いを述べ、
中盤ではASD、ADHD以外のサヴァン症候群や共感覚(シネステジア)、映像記録、学習障害(LD)の概要と
ASD、ADHDとの関連性そして彼等の中から現れる天才の例として幕末に医者としてだけではなく
新政府軍の軍師として活躍した大村益次郎、貧困層出身で他者とのコミュニケーションに難儀していたが
文学の才能により様々な援助を受けて大成したアンデルセン、『ふしぎの国のアリス』のみならず
数学者や写真家でもあった(ただし小さな女の子を好んで被写体にしていたが)ルイス・キャロルといった
人物の行動やアウトプットからどのような発達障害であったかを推察し、後半では度重なる少年犯罪を
通じてその名を知られることとなったアスペルガー症候群がどうして世間から曲解された形で流布して
しまったのか、踏み込んだ言い方をすれば、情状酌量の材料として発達障害が『利用』され、
不可解な少年犯罪=アスペルガー症候群によるものと解されてしまったのか。障害を見抜くことができず、
犯罪を犯すところまで追い込まれてしまった発達障害者そして発達障害者が社会の中で生きて行くには
どうすれば良いかをデイケアでの例を挙げて紹介している。

しかしながら本書でも最後に触れられているように、現実には発達障害に対する適切な対応を取るには
乗り越えなければならない壁が存在し、まずは自分自身が発達障害者ではないかという疑義を
持たなければならず、次に発達障害を専門とする医療機関を訪れて適切な判断を仰がなければ
ならないのだが、その医療機関の数も圧倒的に少なく、著者が属する昭和大学附属烏山病院の
初診電話予約はまるでかつてのチケットぴあの初日特電よろしく回線が混雑し、予約が取れても
数ヶ月待ち、複数回にもわたる本人のみならず家族へのヒアリングののちようやく

 第1章から4章は、ASD・ADHDおよびこれらに随伴しうる諸症状(学習障害・共感覚など)に関する概説である。専門家による最新の研究を踏まえた説明であるが、個別事例が挙げられているため、読みやすい。第5章「天才」は、大村益次郎、アンデルセン、ルイス・キャロルが「発達障害」であった可能性について論じる、いささかユニークなチャプターである(さすがに存命の著名人を挙げるのはまずいのだろう)。6章・7章では、発達障害と犯罪に関する一般社会の誤解を指摘し、その実像に迫る。著者としては、ここに力点があるのでは、と感じられた。第8章は、現状では「発達障害」の人をどのようにして社会に受容させているか、についての解説である。
 多角的な視点から「発達障害」について論じられており、当事者であるか否かを問わず、一読して資するところがある内容だと思われる。

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