探偵太宰治 (文芸社文庫NEO) の感想

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　自分は何故生まれて生きているのか。若い時に誰もが一度は考えること、答えがあるのかどうかは判らないが本当の自分探しは、青春の特権だろう。太宰治の作品が若い人の心を掴んで離さないのは、迷いながらもがく永遠の青春文学であるからだろう。その太宰が探偵役をするということは、「本当」を見つけることが「自分」を見つけることと同じであるからだ。事件を追いながら、悩みながら「自分」という存在を確かめていく姿は、青春文学の旗手にふさわしい。
　登場人物の描き分けはうまく、井伏鱒二や檀一雄と太宰の会話場面は特に面白い。実在の人物を描くに当たってかなりの下調べをしているようで、太宰ファンでも知らないエピソードがあるかもしれず、おすすめだ。