世界の軍事情勢と日本の危機 (日経プレミアシリーズ) の感想

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タイトル世界の軍事情勢と日本の危機 (日経プレミアシリーズ)
発売日販売日未定
製作者高坂 哲郎
販売元日本経済新聞出版社
JANコード9784532262914
カテゴリ » ジャンル別 » 社会・政治 » 外交・国際関係

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購入者の感想

冷戦が終わり、「大国間の対立ではなく、米ソが押さえつけていた地域の民族紛争が中心となった。大きな国際紛争はもう起きない」という楽観論は広く普及しているように見える。
大国で唯一の問題はむしろアメリカの勝手な行動であり、それを押さえつけておけばあとは地域紛争を地道に解決していくので良い、そういう国際関係認識の人は多いであろう。
しかし、昨今の国際情勢は、そういった地域紛争に収まらない、大国レベル、国際社会全体のレベルで再び軍事的対立と不安定化が生じてきている。
ロシアのクリミア併合は「軍事力を背景とした国境線変更」という戦後見られなかった平和秩序への挑戦でもあるし、イスラム国やヨーロッパで頻発するテロはまさに国際社会の大問題である。
しかし、こういった国際社会の混乱に、日本の安全保障は果たしてどれだけ対応できているのであろうか。

筆者は、まず安全保障への姿勢を「安全保障に肯定的か」「問題に積極的に対案を出していくか」の四つに分け、日本人の大半は「保守層(肯定的だが政府に盲従)」「中間層(否定的だが特に対案なし)」「左派層(否定的で非武装中立等の非現実的対案に出す)」の三つになっていると指摘、その上で本書は「安全保障には肯定的だが、政府のやり方を盲従するのでなく、きちんと対案を出していけるような立場」を目指すための本としている。
そのために、現在の国際情勢、軍事的展開の在り方をきちんと理解したうえで、安全保障の案を吟味しなければならないとする。

筆者が強調するのは「複合戦」と「アメリカのパワーだけでは世界の安定が支えられない時代」という点である。
戦争というと軍隊同士が正面からぶつかり合う状況をイメージしがちだが、複合戦においてはそうではなく、宣戦布告がないどころか「戦争である」とも銘打たれず、破壊活動などで弱体化させつつ「軍隊を出すことはむしろ隣国との緊張を招く」などと当該国内の国民を『反戦』運動させて軍隊の出足を乱し、首相をテロなどで一気に殺害し、政治的空白を狙って「わが民族の保護のため」等と称して戦闘なく実効支配をしてしまう、などというのが一例である。クリミアや南シナ海の島では実際そのような手法が用いられている。

現代日本人が得意としない分野、「国防」「安全保障」の入門テキストである。

著者は日本経済新聞の編集委員。軍事おたくでもなく、外交評論家気取りでもなく、むろん空想主義的理想主義の人でもない。
わたしは日経新聞で、リアリズムに裏打ちされた持論が展開された、著者のコラムを幾度か目にしたことがある。
またレーベルは、「日経プレミア」シリーズ。主としてビジネス・パーソンを想定読者とする新書レーベルで、読み易さと、専門的過ぎない取り組み易さに定評がある。

本の扉を開け、最初に「第1章 近未来シナリオ」を読み始めると、「実はトンデモ本ではないか?」と不安になるかもしれない。
しかし心配はいらない。これは読者に「複合戦」という本書のキーワードの意味を理解してもらうための重要な導入部なのである。。

第2章では、日本を取り巻く現代の国際関係を俯瞰する。
現代世界は、民主主義国家、強権体制国家そして過激派組織という3つのアクターが三つ巴の様相をなしているのだという。
日本を含む民主主義国家群はかつて世界の主導権を握っていたのだが、次第にその相対的地位が低下し、守勢にまわっていると指摘する。

第3章は、複合戦時代のゲーム・チェンジャーと題され、上記の3アクターの巴戦の行方を左右する要素6項目(核兵器、生物兵器、宇宙兵器、サイバー戦争、気候変動、無人兵器)が紹介される。

第4章は、日本の安全保障の「死角」10ポイントを指摘する。
縦割り行政組織、現場指揮リーダーの不足、権力承継システムの未整備、情報戦への未熟、ガラパゴス化した安保論議、といった切り口で日本の安全保障体制の不備と、国民の意識が未だ成熟していないところを指摘する。

第5章は、複合戦時代の日本の安全保障と題し、著者から「10の改善策」が提示される。

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