昭和恐慌の研究 の感想

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タイトル昭和恐慌の研究
発売日販売日未定
製作者岩田 規久男
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492371022
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済史

購入者の感想

いわゆる世界恐慌の頃に日本で起きた昭和恐慌についての研究書です。
前半は第一次大戦後の金本位制復帰をめぐる、いわゆる金解禁論争についての歴史的検証。
ここでは昭和恐慌に至るまでの歴史的流れ、世界恐慌と国際金本位制についての概説の後、
政策論争、新聞メディア、雑誌メディアの各視点から、当時の論調が検証されています。
後半は「政策レジームの転換」を軸にすえ、昭和恐慌期の統計的な経済分析を実施しています。

現在、日銀副総裁を務める岩田規久男氏が編者であるほか、日銀審議委員に入った原田泰氏も参加されており、
アベノミクスにおける金融政策の背景を知る上で非常に重要な一冊です。
ちなみにアベノミクス開始前後に出たリフレ派の解説書でも、この本から引用、発展させたと思われる記述が見つけられます。
リフレ政策反対派側から見た場合、内容の正否には異論があるかもしれませんが、
リフレ派が何をどう解釈して今の主張に至ったのかを理解する上で外せない本ではないかと思います。

一点だけ最近読み直していて気付いたことを挙げておきます。それは二段階のレジーム転換について。
デフレからの脱出にはデフレ予想が解消されることが重要であり、そのためには予想を完全に変えてしまうような
政策レジーム(枠組み)の転換が重要とされています。
この本の研究では高橋是清の政策のうち大蔵省による禁輸出再禁止(金本位制からの再離脱)と、
日銀による国債引き受けの二段階でレジーム転換が起きたとしており、特に後者がデフレ脱出の決定打となったとしています。
リフレ派的な解釈ではこの国債引き受けはマネーの拡張がポイントということになりますが、
現在の消費増税後の経済状況を考えると「財政支出による裏付けが重要」とも取れそうに思えました。
以前、

本書は昭和恐慌研究を通じて、平成大停滞からの脱却の処方箋を提示している。
最終的に、昭和恐慌回復の決定要因は金本位制脱却と日銀の国債引き受けの「2段階レジーム転換」であったと結論を述べる。その結論に至るまでは、大恐慌研究との比較、経済学史、各種ジャーナリズム、計量分析など、多角かつ緻密な議論を根気よく展開している。
その結論から導かれる現代日本への政策の提示は「日本銀行がインフレ目標政策を導入し、デフレを阻止し、穏やかなインフレを目指すというリフレーション政策へとレジーム転換を図ることこそが、日本経済がデフレから脱却して、再生するための不可欠の条件になる」
70年の事件を経て、歴史の起承転結がかなり明らかになってきた今、井上財政の清算主義と、高橋財政の金融緩和の議論を見ていくのは非常に有意義なことであろう。そして、現代の日本においてすら、この上なく似通った議論がされていることに驚く(人によっては呆れる)だろう。
ただし、普通の経済書のような気軽な気持ちで手に取るは注意が必要かも知れない。本書はあくまで研究書であり、値段相応に読む時間もかかる。
しかし、良著であることは疑いようがない。
グリーンスパン議長曰く「歴史を学ぶことで、『過去の最悪の過ちを繰り返す』愚行を避ける手がかりを得ることができる」
昭和恐慌の研究は、同じ過ちを繰り返さないために現代において必要とされている。
是非一度、現代を映す鏡である歴史と向き合ってみてはいかがだろうか

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