水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1) の感想

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参照データ

タイトル水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)
発売日販売日未定
製作者フーケー
販売元岩波書店
JANコード9784003241516
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学

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購入者の感想

 三島由紀夫の『仮面の告白』の中に出てくるのだが、これまで全く知らなかったので一度読んでみようと思い、タイトルを手帳に書き留めておいた。先日アマゾン・マーケットプレイスに1円で出品されていたのを見て、直ぐに取り寄せた。

 表紙には「ヨーロッパに古くから伝わる民間伝承に材をとった、ドイツロマン派の妖しくも幻想的な愛の物語」とある。

 娘をなくした漁師夫婦に育てられた水の精ウンディーネと騎士フルトブラントの恋物語だ。水の精であるウンディーネはフルトブラントと結ばれ、人間のような魂を得るが、やがてフルトブラントはベルタルダに心変わりすると、ウンディーネは姿を消してしまう。実はベルタルダは亡くなったと思われていた漁師夫婦の娘だった。やがてフルトブラントがベルタルダと結婚すると、水の精ウンディーネは掟に従いフルトブラントの命を奪う。

 ウンディーネの由来は、水精をラテン語のunda(波)に基づいてウンディーナ(undina)と名づけたが、ドイツではこれをウンディーネ(Undine)またはオンディーネ(Ondine)と呼び、フランスではオンディーヌ(Ondine)と呼んでいるそうだ。

 伝承では、水の精は女の姿をしていて、人間の男に愛され妻になると魂を持つ。夫は水辺でその女を罵ったりすると、女は水中に帰ってしまう。その後別の女を娶ると、水精が夫の命を奪いに現れるという。こんな怖い伝承があって、フーケーはこの『水妖記』に仕立て上げたのだという。オペラやミュージカル、バレエなどにもなっている、ヨーロッパでは良く知られた言い伝えらしい。これまで知らずにいたのが恥ずかしいくらいだ。

 岩波文庫は「読まずぎらいしていませんか」と書いている。確かにドイツ文学なんていうと取っ付き難いように聞こえる。しかしそれでも読んでみるべきだ。読んで良かった。こんなに面白い物語が埋もれていた。三島由紀夫に感謝しなければならない。

 日本の「鶴女房」「雪女」や、アンデルセンの「人魚姫」のように、人間が人ならぬ自然の精や動物と恋に落ち、結ばれるというモチーフは「異類婚礼譚」といって世界中にあります。
 この作品も、一般の異類婚礼譚とほとんど同じパターンをとるのですが、印象に残るのはイメージの美しさ、異様さ。
 ヒロイン、ウンディーネの叔父である、水の精キューレボルンの登場の仕方などは、現代のホラー映画の演出もびっくりという感じで唸らされました。
 暗く生い茂った森の中を走る水という場面設定の印象も強烈。
 訳文は戦前のものですが、格調高くてこの作品にあっているように思えました。
 2、3日、日常を忘れたいときにお勧めです。

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