虚ろな十字架 の感想

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タイトル虚ろな十字架
発売日2014-05-23
製作者東野 圭吾
販売元光文社
JANコード9784334929442
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

11年前にひとり娘を殺された中原は、数年前に妻と離婚し、仕事も辞めて伯父から引き継いだ会社で働いていた。そこに佐山という、娘の事件のときの担当だった刑事が訪ねてくる。中原の元妻の小夜子が何者かに刺殺されたという。中原は、離婚後の小夜子の行動を調べてみることにしたのだが・・・。

残虐な事件をニュースで見るたびに「犯人は死刑かな?」などと単純に考えていたが、犯罪と刑罰の問題というのはとてつもなく大きくて複雑なものだと思った。中原の娘を殺害した蛭川。彼は最後まで反省することはなかった。もちろん、被害者家族への謝罪もない。そんな男が死刑になったとしても、はたして被害者の家族たちは救われるだろうか?私は救われないと思う。どこへもぶつけることができない怒りや悲しみが、生きていく限り続いていくのではないだろうか。
刑務所に入ってもまったく反省しない者。罪の意識にさいなまれ、苦しみながら毎日生活している者。はたしてどちらが罪を償っていると言えるのか?この作品を読むと分からなくなってくる。
「世の中で起こる残酷な事件。それは、どれとして同じものはない。なのに、みんな同じ死刑にしてしまっていいのか?」登場人物の口を借りて作者が読み手に問いかけてくる。いったい誰がこの問いに答えられるというのか?人が人を裁くことがいかに大変なことか、読んでいて痛いほど伝わってくる。「罪は償わなくてはならない」そんな当たり前の言葉さえ気楽には言えない。
小夜子の生きざまが切なかった。娘を殺されたというつらさを、彼女なりに乗り越えようとしていたのに・・・。

一体どこの誰に、「この殺人犯は刑務所に○○年入れておけば真人間になる」などと断言できるだろう。殺人者をそんな虚ろな十字架に縛りつけることに、どんな意味があるというのか。

作者の言葉は、読み手の心を深くえぐる。さまざまな重い問題を含んだ、読み応えのある作品だった。

まずミステリとしてよくできています。プロローグに登場する少年少女の初恋がどう事件として関係してくるのか。自分なりに想像しながら読むことができました。もちろん、事件の核心は想像しきれませんでしたが、決して「それはずるい」っていう謎解きにはなっていませんでした。

作中には3種類の殺人者がでてきます。ささいなことで人を殺し、更正するどころか、反省もしない人。やむにやまれず、人を殺し、そのことでずっと苦しんだり、自分なりの贖罪に一生をかけてきた人。家族を守りたいばかりに、短絡的に殺人を犯した人。作中の一人は、理由が何であれ、人を殺せば死刑にすべきと主張しますが、この三つの異なる殺人は、すべて死刑がふさわしいですかっていうのが作者の問いかけのようです。私としては、死刑執行の仕事など、できそうもないので、そもそも死刑制度には賛同できませんが、死刑にするしかないような人がいるのも事実です。作中のある弁護士は「多種多様な結末があってもよいのではないか」と言いますが、確かに大岡裁きのようなものがあってもよいかもしれません。

本書は、死刑を取り上げていますが、死刑に限らず、そもそも刑務所に入れることにどれだけの意味があるのか、考えざるをえません。社会が前科のある人を受け入れないという問題があるとはいえ、更正しない人もたくさんいますし、知的障害者や高齢者もたくさん服役しています。何のための刑罰なのか、刑務所なのか。被害者サイドからすれば、加害者が刑罰を受けても得るものは何もないですし。かといって代案もないし。誰もが納得する方法はないでしょうね。そのせいか、読後にもやもやが残ります。0

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