富士山バードウォッチングガイド (BIRDER SPECIAL) の感想

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いまから８０年前の１９３４年６月３日。
日本野鳥の会創設者のひとり、中西悟堂氏の声かけで、
多くの文化人が集まり、富士山須走でバードウオッチングを
楽しんだのが、日本で初めての探鳥会と聞く。

まだ鳥は喰うもの、飼うものという考えが強かった戦前の日本で
あえて、鳥を観に行くという行為は、世間には奇異に映ったかもしれないが、
それでも富士山まで行って鳥を観たいと思うほど、この地は魅力的だった
のだろう。

それから８０年。
富士山の自然は今も生き続け、鳥がいやすい環境が保たれている
のが、この本を読むとよくわかる。
もちろん、富士山を熟知した執筆者の方々はじめ多くの方々が
富士山の自然を守るためにご尽力されているたまものだろう。

現地の状況を誰よりも知っている、執筆者のみなさんの視点で
書かれた解説文は、とても立体的で説得力があり、魅力に
あふれている。
読んでいくうちに、今すぐにでも飛んでいきたくなるほどだ。

鳥のことだけではなく、マナーにも言及した内容で、好感が持てる。
自分を棚に上げ、うすっぺらにマナーを語る人も世の中にいるようだが
富士山の最前線で、日々、自然や鳥と対峙している人の言葉の重さには
かなわない。

富士山は鳥にとっても鳥観人にとっても自然遺産と再認識。
この本を手にとった人が、きちんと富士山の自然を思い、守る行動に
移せるよう願ってやまない。