読む年表 中国の歴史 の感想

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タイトル読む年表 中国の歴史
発売日販売日未定
製作者岡田 英弘
販売元ワック
JANコード9784898311783
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » 中国史

購入者の感想

戦後ナンバーワンの天才歴史家、岡田英弘教授の歴史観をサマライズした本です。戦後の日本で教えられている日教組の歴史観とは大きく異なるものなので、岡田初心者が見ると戸惑う可能性もあります。もちろん、彼の主張には明確な論拠の裏付けがあるので、それを知れば納得できるものですが、この本の分量ではそれを説明しきることは不可能ですので、「過激」な結論だけを知って、納得できない人もいるかもしれません。その場合は、「歴史とはなにか?」とか、ほかの著書から読まれることをお勧めします。

私みたいな、彼の著書をだいたい読み込んでいる人間からすると、頭の中が整理されてすっきりします。個人的にはロシア人は「黄金のオルド」こと、チンギスハーンの孫のパトが作ったキプチャクハーン国にピョートル大帝時代まで支配されていたという記述はツボでしたね。ロシア人のあの独特の顔立ちは、モンゴル人とルーシー(北欧人)の混血ということですね。アジア人の血が入っている。しかし現代のロシア人は絶対認めたがらないそうです。ソ連時代は衛星国だったモンゴルでチンギスハーンについて教えること自体を禁止してたそうです。冷戦崩壊後、日本の歴史家が(岡田氏の奥さんである宮脇淳子博士)などが、モンゴル人にチンギスハーンについて教えたそうです。

 中国史をこんな形で記述するとは!その自由な発想に驚く。マルクス主義発展的歴史観の束縛から離れ、虚構の民族国家五千年説を排する。たった二千二百年間、秦、漢、唐、元、明、清など異種族王朝が興亡しただけ。日本人は考える。中国は漢人の民族国家だ、と。だが漢族とはどの少数民族にも属さないという以上の意味はない。本書の中国を日本と同じ概念と考えてはいけない。中国という国家は二十世紀までなかった。その領土も皇帝の血筋もそこで暮らす人々も、時代ごとに大きく変化してきた。血や言語、民族のアイデンティティも存在しなかった。
 歴史学者の筆者は「漢字という表意文字の体系を利用するコミュニケーション…が通用する範囲が中国文化圏であり、それに参画する人々が中国人」と述べる。その時代区分は何と次の五つである。秦の始皇帝の統一前までが中国以前、随による再統一までが中国第一期、元による南北朝終焉までが第二期、清朝までの第三期、日清戦争敗戦から始まる中国以降の時代。
 中国人の歴史観では、北方の蛮族が中国に入ると偉大な中華文化に感化され、やがて吸収され消滅する。だが実は話が逆だ。北方民族に征服されるたび、漢人は北アジア文化に同化した。満洲人が清朝を建てると、漢人に辮髪(べんぱつ)を強制。拒否すると首を刎ねられた。満洲人の服装は禁じられた。憧れても着られなかった。清朝末期、ようやく漢人に満洲服がゆるされた。漢人女性は大喜びで旗袍(ちーぱお:旗は衣偏が正しいとのこと)チャイナドレスを着た。いまも中国人は死者に清朝官服を着せる。死ねば念願の満洲服が着られる。それほど中国は満洲化したのだ。
 露の南下を恐れた日本は、朝鮮の独立と近代化を求めた。他方、清仏戦争で南越宗主権を奪われた清朝は、関心のなかった朝鮮を支配下に置く。東学党の乱を機に両国は軍隊を半島に送り日清戦争となる。清朝は敗北。衝撃は深刻だった。中国の伝統的システムはもう通用しない。栄光ある孤立の時代は終焉。日本型の近代化路線に乗り換えた。日本で既に漢字文化になじむよう消化された欧米システムを採用。既存の漢語体系は全面的に放棄され、和製漢語を基礎とするシステムに替わった。現代漢語の起源だ。ここに中国の歴史は独立性を失い、世界史の一部、それも日本を中心とする東アジア文化圏に組み込まれた。一八九五年が分岐点だ。

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