クアトロ・ラガッツィ 下―天正少年使節と世界帝国 (2) (集英社文庫 わ 13-2) の感想

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タイトルクアトロ・ラガッツィ 下―天正少年使節と世界帝国 (2) (集英社文庫 わ 13-2)
発売日販売日未定
製作者若桑 みどり
販売元集英社
JANコード9784087462753
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

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 著者はエピローグで、少年使節の悲劇が日本人の悲劇でもあると説明している。「イエズス会のザビエルが鹿児島に上陸した1549年(天文18年)から、江戸幕府が第一次鎖国令を出す1633年(嘉永10年)までの80年間、日本はまさに「キリスト教の世紀」を迎えていたのである。そのときほど日本が世界的であったことは明治以前にはなかった。そのシンボルとして少年使節があったのである。(中略)しかし、少年たちが日本に帰ってきたときに、時代は戦国時代から統一的な国家権力のもとに集中され、他の文明や宗教を排除する鎖国体制に向かっていた。そのために彼らの運命はこの大きな時代の流れのなかで悲劇的なものになった。ある人びとは彼らの事業は無益だったという。しかし、四人の悲劇はすなわち日本人の悲劇であった。日本は世界に背を向けて国を閉鎖し、個人の尊厳と思想の自由、そして信条の自由を戦いとった西欧近代世界に致命的な遅れをとったからである。ジュリアンを閉じ込めた死の穴は、信条の自由の棺であった。」これは、何という鋭い歴史への洞察であろうか。

 私はまた、著者がエピローグの結びで述べたことに、少年使節を越えて人に対して示された敬意に満ちたこの結びの温かい言葉に、思わず感極まり涙した。それは、次のとおりである。「しかし、(書評者注:この本で)書いたのは権力やその興亡の歴史ではない。私が書いたのは歴史を動かしてゆく巨大な力と、これに巻き込まれたり、これと戦ったりした個人である。このなかには信長も、秀吉も、フェリペ二世もトスカーナ大公も、グレゴリオ十三世もシスト五世も登場するが、みな四人の少年と同じ人間として登場する。彼らが人間としてすがたを見せてくるまで執拗に記録を読んだのである。時代の流れを握った者だけが歴史を作るのではない。権力を握った者だけが偉大なのではない。ここには権力にさからい、これと戦った無名の人びとがおおぜい出てくる。これらの少年たちは、みずから強い意志をもって人生をまっとうした。したがって彼らはその人生においてヒーローだ。そしてもし無名の無数の人びとがヒーローでなかったら、歴史をたどることになんの意味があるだろうか。なぜならわたしたちの多くはその無名のひとりなのだから。」(2003年9月13日、筆者)

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