一四一七年、その一冊がすべてを変えた の感想
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参照データ
タイトル | 一四一七年、その一冊がすべてを変えた |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | スティーヴン グリーンブラット |
販売元 | 柏書房 |
JANコード | 9784760141760 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 |
購入者の感想
古代ローマの幻想詩人ルクレティウスの書『物の本質について』。1417年のある日、ある男が、修道院の図書館からこの埋もれていた本を引っ張り出して手に取って読み、興奮し、書写を命じ、フェィレンツェの友人たちに送ったことから、歴史の大きな変化が生じた。神や霊魂や死後の世界の存在を否定し、人間も含む万物は無数の粒子の絶えざる運動からなると主張し、人生の究極の目的は喜びに他ならないとした、古代ギリシャのエピクロスの哲学を美しく詠い上げたその書物は、ルネサンスの作家や芸術家たち――モンテーニュやボッティチェッリなど――に多大なインスピレーションを与え、西洋に近代をもたらしていく。その1冊の本の再発見がもたらした、キリスト教が支配的であった中世的世界からの「逸脱(Swerve)」をめぐる歴史を、細密に描き出し、魅力的に語りつくしたのが本書である。男がなぜその本を書写するに至ったか、その動機や経緯が多くの資料に基づき克明に記述されており、またこの歴史的事件の背景となるルネサンス以前の教会や修道院や図書(館)をめぐる文化などについても、まるで実際に見てきたかのように鮮やかに描かれている。西洋史に関心のある向きにとって非常に学ぶところが大きいのはむろんのこと、広く読書好きの知的欲求を満足させてやまないことは間違いないだろう。ハーバード大学教授のシェイクスピア研究者による、2011年全米図書賞&2012年ピュリッツァー賞ノンフイクション部門受賞作。