ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか の感想

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タイトルヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか
発売日販売日未定
製作者エリック・ブライシュ
販売元明石書店
JANコード9784750339504
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

2019年の夏、「表現の自由」についてメディア上で一斉に話題なった時、訳者の一人である明戸隆浩さんが書かれている記事に目がとまりました。煽情的な見出しが多い中、論点整理がなされていて、ようやく議論の土台ができたのだなあと感じました。
本書はレイシズムと表現の自由、地域的特にヨーロッパとアメリカでの法体系の違いなどが丁寧にまとめられており、人はどうやってこのレガシーとも言える問題を解決していけば良いのか、そのための基礎を伝えてくれています。

ヘイトスピーチを規制すべきか、それとも言論の自由として守られるべきか。
この非常にデリケートかつ難しい問題について、アメリカとヨーロッパ(ドイツがやや多め)でどのような取り組みがなされ、そしてどうなっているかという問題を論じた本である。

ヨーロッパにおいては、人種差別を扇動するような表現には、罰金が科されることはわりと行われている。
しかし、高額でもない罰金はあまりダメージにならず、フランスのルペンのように繰り返し差別発言を行うものもいるため、その実効性には疑問視する声もある。
一般のヘイトスピーチがこのような扱いなのに対し、しばしば刑罰まで課されるのはホロコースト否定論である。
これは他の差別言説と比べても突出した扱いであるといい、行き過ぎな面も本書では指摘されている。

一方アメリカは表現の自由や結社の自由を強く擁護するというイメージが強い。
しかし、50年代までは厳格なヘイトスピーチ規制が行われており、現在のように言論の大きな自由が認められるのは60年代以降の動きだという。
また、通常のイメージに反し、差別禁止の法整備はアメリカではかなり早くから行われており、逆にドイツではあまり行われていない、というのも各国の事情と関心の位置を示しているようで興味深い。

筆者の最終的な見方、政策的なもの(移民政策の是非など)と脅迫、犯罪のほのめかしや扇動、憎悪の掻き立ては一定の状況では区別できるし、その場合には後者を規制する(ただしその方法や範囲は歴史的事情にかなりよる)、というのも穏当なところだと思う。

さて本編はこのように非常に面白いのだが、役者解説がそれをぶち壊しにしている。

本編で筆者は、ひとくくりにヘイトスピーチ規制を論ずるのではなく、個別個別の性質を見ながらそれぞれ取り扱いを分けていく慎重かつ冷静な議論を行っている。
ところが役者解説では、在特会の「朝鮮人はみんな殺せ」のような明らかな扇動と、東アジアの史実を巡る批判とを(ホロコースト否定論を持ち込むことで)同列のような扱い方をしている。

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