父と暮せば (新潮文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 父と暮せば (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 井上 ひさし |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101168289 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
「父と暮せば」は、井上ひさしが書いた戯曲の中でもひときわ異彩を放つ作品だ。ひとつの劇の中に喜劇と悲劇が描かれ、主人公・美津江という個人の恋模様を描きながら、1945年8月6日の広島への原爆投下で命を失った多くの人の訴えを伝えている。
この作品では、細かい設定にも必ず何らかの必然性がある。その種明かしは本文の中でも為されているが、たとえば、美津江が図書館員、或いは昔話研究会の会員であるということは、体験や情報を「伝えていく」ということと密接に関わっている。この作品の中で父・竹造(原爆で死去)の役割とは美津江の恋を応援することだけでなく、この「伝えていくこと」の大切さを気づかせることでもあるのだ。
作品の中にある実際の被爆者達の言葉。それらは、手記の中にあるだけでは光を秘めた小さな原石に過ぎないが、井上ひさしはそれを磨き上げて美しい宝石にした。そして、それらを織り込んで創られた珠玉の芸術作品が、この「父と暮せば」なのである。
この作品では、細かい設定にも必ず何らかの必然性がある。その種明かしは本文の中でも為されているが、たとえば、美津江が図書館員、或いは昔話研究会の会員であるということは、体験や情報を「伝えていく」ということと密接に関わっている。この作品の中で父・竹造(原爆で死去)の役割とは美津江の恋を応援することだけでなく、この「伝えていくこと」の大切さを気づかせることでもあるのだ。
作品の中にある実際の被爆者達の言葉。それらは、手記の中にあるだけでは光を秘めた小さな原石に過ぎないが、井上ひさしはそれを磨き上げて美しい宝石にした。そして、それらを織り込んで創られた珠玉の芸術作品が、この「父と暮せば」なのである。