安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書) の感想
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参照データ
タイトル | 安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 山岸 俊男 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121014795 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
本書は社会心理学の本です。本書は、社会的不確実性がない状態を「安心」、社会的不確実性がある状態で相手を信用することを「信頼」と定義し、日本は安心社会だったが信頼社会へ過渡していると主張しています。興味深いのは、実は日本人はアメリカ人よりも個人主義という点。社会的に長期的関係を維持させるような制度があるせいで裏切れないだけであり(例えば村八分などの社会的サンクション)、日本人はそうしたサンクションがなければ極めて個人主義的に行動するという実験結果。これはたしかに言える。日本の大企業などは終身雇用などと言われるが、日本人が長期的に企業に勤めるのは好きだからではない(いわゆる愛社精神のある人の割合をみると、日本はアメリカの半分以下)。制度的に一度入社した企業を辞めずらいから辞めないだけなのである。高度成長期は日本型の安心社会は有効に機能したが、社会変動の結果、あまりにも日本型安心社会はコストが高くつくようになり維持が困難となった。そのため日本の安心社会は崩壊しつつあるというのだ。
読後、思わず「なるほど!」と言ってしまった本。本書の概念を使うと、現代の日本社会の変動がクリアに理解出来る。大学生や知的好奇心旺盛な社会人にオススメ。
読後、思わず「なるほど!」と言ってしまった本。本書の概念を使うと、現代の日本社会の変動がクリアに理解出来る。大学生や知的好奇心旺盛な社会人にオススメ。
糸井重里氏の『インターネット的』(PHP新書)で紹介されていたので読んでみました。期待以上に興味深い本です。
もっとも興味深かったのが、男女差別が生まれる理由を解説した部分です。「男女差別が生まれるのは偏見があるから」と言われますが、実はこれは社会構造への適応の結果であるとしています。
つまり、(男女差別がある)→女性は、出世の機会が少ないため、がんばることへの報酬や、サボることの不利益が少ない→全体的な傾向として男女の意欲や成果に差が出る→人事担当者は、終身雇用のもとでは「はずれ」の人材を選ぶことのコストが大きいので、統計的に「はずれ」が少ない方を選ぶ→男女差別が強化される。 という構造です。そのため、いくら「男女差別は良くない」といって意識変革を迫っても、「差別文化」の構造が変わらない限り問題は解決しません。
最近は、社会問題に対する解決策として、情緒的に「昔の日本人の心を取り戻せ」との提案がなされたりしていますが、筆者が実証するとおり、これはむしろ社会構造の問題であり、心の持ちようで解決する問題ではないことが分かります。
この他にも、「日本人はアメリカ人よりも個人主義である」ことや、「正直者がバカを見る」というのは必ずしも正しくないことなど、世間一般で信じられていることとは逆の事実が実証実験の結果と共に論じられており、衝撃的です。
社会心理学の立場から、人々の行動や文化を、人間の性質ではなく、社会構造から読み解く本。「日本人の心は貧しくなった」的な現代批判とは違った角度から現代の日本を眺めるためにも、一読を強くおすすめします。
もっとも興味深かったのが、男女差別が生まれる理由を解説した部分です。「男女差別が生まれるのは偏見があるから」と言われますが、実はこれは社会構造への適応の結果であるとしています。
つまり、(男女差別がある)→女性は、出世の機会が少ないため、がんばることへの報酬や、サボることの不利益が少ない→全体的な傾向として男女の意欲や成果に差が出る→人事担当者は、終身雇用のもとでは「はずれ」の人材を選ぶことのコストが大きいので、統計的に「はずれ」が少ない方を選ぶ→男女差別が強化される。 という構造です。そのため、いくら「男女差別は良くない」といって意識変革を迫っても、「差別文化」の構造が変わらない限り問題は解決しません。
最近は、社会問題に対する解決策として、情緒的に「昔の日本人の心を取り戻せ」との提案がなされたりしていますが、筆者が実証するとおり、これはむしろ社会構造の問題であり、心の持ちようで解決する問題ではないことが分かります。
この他にも、「日本人はアメリカ人よりも個人主義である」ことや、「正直者がバカを見る」というのは必ずしも正しくないことなど、世間一般で信じられていることとは逆の事実が実証実験の結果と共に論じられており、衝撃的です。
社会心理学の立場から、人々の行動や文化を、人間の性質ではなく、社会構造から読み解く本。「日本人の心は貧しくなった」的な現代批判とは違った角度から現代の日本を眺めるためにも、一読を強くおすすめします。