グロテスク〈下〉 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルグロテスク〈下〉 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者桐野 夏生
販売元文藝春秋
JANコード9784167602109
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

正直この小説を読み終えて現実と言う苦々しさを感じる。
しかし、この小説は実際に起きた東電OL殺害事件をベースに書かれていて、その事件が起きた当時の状況もまざまざと立ち浮かび、様々な社会問題を背景にしながら、読者を最後まで飽きさせない。

本の構成は、書き手の私が主人公の私になったり、友人の和恵が私になったりとした各々の日記や手紙を通した形になっているので、その「私」の思うがままを語っている。それゆえに、人間のシニカルな部分が露呈していて、時として愕然とさせられ嫌悪する。特に印象深いのは、学歴一辺倒で努力すれば何でも実るという神話に踊らされ、またそれに自覚せずに堕ちて行く和恵の姿は本当に読んでいて辛い。でも、そうやって他人を卑下した主人公は、自分の矛盾に気付きながらも、今度は自分が堕ちて行く。

この小説は、人はいつでも堕ちて行く準備が出来ているということを教えてくれる。

タイトル通り、「グロテスク」な作品ですね。

登場人物のほとんどが「狂っている」とも言えるほど歪んだ性質を持っていて、

ただでさえヘビーなそんな人物の手記をいくつも読む形で人生を疑似体験していくことになるので、かなり読んでいて疲労感があります。

特に主な語り手である「わたし」はしょっぱなから被害妄想的・過批判的で「この人頭おかしいなぁ」と思わせる言動を連発するし、

ユリコや和恵の手記の章に入ると「闇」の深さのせいか胃に来る不愉快さがあり、まるで濡れて重たい土砂をお腹につめこまれるような感じさえ受けました。

読破したその日は1日中この本と本から受ける負の影響のせいで、平凡な自分の人生について振り返ってしまったり登場人物に共感しようとしてみたりと、沈んだ心を引きずったまま過ごしました・・・。

自分とは違う世界にいる人間の人生を通して未知の世界を知る、というと聞こえはいいですが

この作品はちょっとヘビーすぎます。

作品としては読み応えも引き込まれ方もすごくて素晴らしいんでしょうが、あまりにも読後感が悪いので星3つにしました。

他のレビュアーの方同様、もう2回目は読みたくないですが、ここまで迫力と重圧のある作品を読んだのは初めてだったのでいい経験にはなったと思っています。

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