黄泉(よみ)の犬 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル黄泉(よみ)の犬 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者藤原 新也
販売元文藝春秋
JANコード9784167591052
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

この書籍についてのレビューは以前に一度書いたけれど、もう一度書き直さなければいけない。
僕は以前オウムに出家していたことがあって、この本がいろいろなことのヒントを与えてくれているにもかかわらず、それをうまく表現できていないのが気になっていたのだ。
この本にはオウム真理教の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫の実兄とのインタビューと、著者がかつてインドを放浪したときのことが書かれている。この本の内容はとても重く、ある意味普通に生きていたら考えないですむけれど、実は一番大事かもしれないことだ。
この本で著者は松本智津夫の実兄、松本満弘氏(故人)から、少年時代に智津夫が手足のしびれを訴えたことや視野狭窄から、水俣病の患者として登録してもらうための申請をしたことを明かされている。満弘氏が八代の海で釣ってきた魚を、食いしん坊の智津夫がよく食べていたので、自分にも責任があると思っていたようだ。
地図で見てみると、八代市も水俣市も八代海に面した海岸沿いの町だ。間に芦北町があるが、市の中心部同士で見ると東京駅と立川駅くらいしか離れていない。
だれもが学校で習ったと思うが、水俣病は日本で最初に知られた公害病で、有機水銀が食物連鎖により、人体に蓄積されることから起きる。特に水俣の場合は工場排水から、魚介を経由して人体に取り込まれたとされる。
水俣病のことはよく知られているが、その病人の数もいまだに分かっていない。患者の発生から50年、原因の特定から40年近いのにである。
原因の追究も責任の特定も、賠償のための調査もなかなか進まないのは、水俣病の原因物質を排出していたチッソ水俣工場が生産していたのが、日本の発展のために欠かすことのできなかったアセトアルデヒドだったからだ。チッソはいわば国策企業として、国の保護の下、日本の工業化に大きく貢献した。しかしそれが公害物質の排出の長期化、大規模化をももたらした。それに、それまで経済的に貧しかった水俣市民にとっては、労働や顧客を連れてきてくれるチッソの存在はありがたいものだった。もしこれが単なる一企業の垂れ流しが原因なら、問題の解決も早かったのだろうが、官・民の利権が絡んだ構造が、地域住民の生活をも支えていたために、患者自身が泣き寝入らざるをえない空気を生み出したのだ。

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