ひきこもりはなぜ「治る」のか?―精神分析的アプローチ (ちくま文庫) の感想

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参照データ

タイトルひきこもりはなぜ「治る」のか?―精神分析的アプローチ (ちくま文庫)
発売日販売日未定
製作者斎藤 環
販売元筑摩書房
JANコード9784480429957
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 » 心理学入門

購入者の感想

Amazonで購入させていただきました。

まず、ぼく自身について述べさせていただきます。
ぼくは過去に、10年間に渡って社会的ひきこもり的な生活を続けたことがあります。
社会的ひきこもりの正確な定義に照らせば、約1年間ほど完全なる社会的ひきこもりでした。
その「完全なる社会的ひきこもり」生活をしていたときに、一念発起して(というのも、どういう形ではあっても他者と触れあいたかったからです)アルバイトをはじめました。
アルバイトを約1年間して、人慣れをしてから某会社に正社員として採用してもらいました。それ以降いままで仕事を辞めずに数年間働いています。
社会的ひきこもり経験者のぼくのレビューがどなたかの役にたったとしたら幸いとおもい、筆をとった次第です。

著者の斎藤環(さいとう・たまき)さんは、

①(社会的)ひきこもり
②病跡学(『関係の化学としての文学』で2010年度の日本病跡学会賞を受賞)
③(ラカンの)精神分析(『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』で2013年に第11回角川財団学芸賞を受賞)
④思春期・青年期の精神病理学

が専門の精神科医でいらっしゃいます。
本レビュー執筆時現在(2017/5/19)には母校・筑波大学の医学医療系社会精神保健学の教授でいらっしゃいます。

本書は、2007年10月に中央法規出版から単行本として刊行されたものが、2012年10月にちくま文庫に文庫化されたものです(ちなみに、2017年5月19日現在、単行本版も購入できます)。

本書の成りたちは「はじめに」のなかで以下のように述べられています。

「二◯◯六年の九月から一一月にかけて、私は社団法人青少年健康センターが主催する理論講座「不登校・ひきこもり援助論」の講師を務めました。/この本は、全六回に及んだその講座の記録をもとに、大幅に加筆修正をほどこしたものです」(p.3)

本書の内容は「あとがき」に以下のようにまとめられています。

著者の斉藤環先生は、「ひきこもりが治る」ということを「自由になること」と表現している。「自由になる」ということはあらゆる価値観や信条に関して「縛られない」ということである。
まず、ひきこもりからの脱出=まともな職につくこと、という固定観念を捨てることが前提となる。家族と同居している場合も、叱咤激励したり厄介者扱いしたりするかわりに「あいさつ」をし、「声をかけること」を薦めている。また、職につかせようとあせったり、医療機関への受診を強制することは解決とならないどころか、ひきこもりを通じてぎりぎりのプライドを保っている当事者をさらに追い詰めてしまうという。「安心していられる居場所」をつくることが第一歩なのだとしている。
ひきこもっている若者たちは、言葉や行動で家族を攻撃するかもしれない。けれど彼らの多くは「自分はダメな人間だ」と感じている。家族に対する攻撃的な言葉や行動も、社会からの逃避も、自らの思い通りに動けない若者たちの苦悩の表現なのだ。
そのうえで、「将来設計」に関して必要なこと、有意義なことを段階的に進めていく。たとえば家族内で、面倒を見られるのはいつまでか(金銭面)、両親が働けるのはいつまでか、相続などについても具体的に話し合っておく。
 ひきこもりを「治療の対象」とすることは短絡的なのかもしれない。家族でない第三者が声を掛けること、仲間と接する場所をつくること、本人が望んだときに就労支援に結びつけること、などがひきこもりからの脱出の糸口になるケースも多い。ひきこもり=怠け者or堕落者というレッテルを剥がして「ひきこもり能力」があるというように見かたを変えること(リフレーミング)も有効らしい。
 治療者に対しては「治療の快楽」に浸ってはいけない、と警告すると同時に、本人および周囲の人に対しては「治療美談」(あのDr.が・・・あの人と出会ったことが、私の人生を変えた!というような劇的な体験談)を鵜呑みにしてはいけないとも書かれている。

*個人的に「治療美談を鵜呑みにしない」という教訓は納得できるところがありました。一時的な判断で大金を失い、それがまた自信喪失につながることがあるからです。

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