日本経済論―「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書 340) の感想

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タイトル日本経済論―「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書 340)
発売日販売日未定
製作者松原 隆一郎
販売元NHK出版
JANコード9784140883402
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 貴金属である外貨をできるだけ多く獲得することを国家の目標とし、政府が市場を規制して輸出振興をはかる歴史上の政策全般を重商主義と呼ぶ。著者は、小泉内閣(01〜06年)の「構造改革」は「総需要(内需)不足を輸出によって補うための政府介入であり、その点で重商主義なのである」とする。構造改革が標榜した市場主義とは、とりわけ、労働、土地、資本といった生産要素市場の規制緩和を政府が強制的に行う「国策にもとづく生産要素の市場化」であった。(著者は、歴史的重商主義にも政治権力にもとづく市場化という面があったことを指摘している。)
 輸出振興によって貿易黒字を最大化するという政策は小泉政権に限ったことではなく日本の歴代政権の目指すところであった。それはまた企業の国際的な価格競争力を維持することであったから円の対外価値を低い水準に維持することが是とされた。しかし、輸出企業を成長させるという経済戦略の下では、家計部門は企業部門に対しておこぼれ的な性格しか与えられない。内需不足による消費不況が日本経済の体質ともいうべきものとなった。このような政策が続く限り、円に対する上昇圧力は止まない。対策として採られたのは生産の合理化である。その柱の一つは人件費の削減である。家計部門の窮乏化はこのような形でも押し進められたがそれは市場規模の縮小を意味した。ところがリーマン・ブラザーズの破綻は日米の金利差を解消し日本の重商主義を吹き飛ばした。
 本書の第1章は「経済をめぐる迷走と論点」と題されている。第2章以下第5章までこの「経済」が順次「国際関係」、「民主党政権」、「安心」、「公共性」によって取って代わられる。読者はこれらの章から日本の取るべき道を読み取らなければならない。最終章「論壇はどこにむかうのか」で読者はなるほどと思う。本書は新聞に連載した時評をベースにしている。日本経済が袋小路に入りこんだような状況の下では経済は広く社会的背景の下で論じられなければならない。表題とはいささかずれているとしてもその時評的部分も面白い。ただ受験予備校を公共財に擬するなど、戸惑わされる議論もある。

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