プリティ・モンスターズ の感想

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参照データ

タイトルプリティ・モンスターズ
発売日販売日未定
製作者ケリー・リンク
販売元早川書房
JANコード9784152094698
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

3冊目の作品集ということで楽しみにしていたら、前2冊と重複した作品が3編も?!これはコストパフォーマンスとしてどうなんだろう?と非常に不満に思いながら読み始めたのですが…

本来なら重複でなく新作を読みたかった気持ちはありますが、前2冊から引っ張ってきてでもこの作品集にまとめたかった編集意図(作家ご本人か編集者かわかりませんが)はよく理解できます。
ここに選ばれたのは少年少女が主人公、もしくは語り手の作品ばかり。彼らは闇の奥を覗き込んで異形のものを発見するような事態にあっても全く動じない。ほとんど驚きも戦きもしないくせに、ものすごく敏感にそうした事態を察知する--その目と感性がリンクの作風にはぴったりで、とっても弱いけれど決して酔いが醒めない酒を飲んでしまったような感覚が読んでいる間じゅう続きます。

リンク未読の方には、この少年少女の世界が真骨頂と思われても不思議はないのですが、ここには登場しない、鈍感で微妙な変化に気付かない、あるいは気付くことを拒否する大人たちが主人公の世界も堪能してこそリンクの良さがよりわかると思います。

その意味では、両方の作品を楽しめる「マジック・フォー・ビギナーズ」のほうが読み応えはあります。こちらは文庫なので、コスパ重視の方はこちらから読むのをお薦めします。もちろん、それでケリー・リンクに嵌れば必ずこの作品集に手が伸びると思いますが

代表作がすべて入っている上、書き下ろしの短篇まで読める、という点、初心者にとって非常にお得な気がする短篇集です。(反対に、すでに別の短編集をお持ちの読者は、買いあぐねてしまうのかも。)訳者あとがきによると、ヤングアダルトのジャンルに入るペーパーバックの邦訳、とのこと。若い読者への、名刺代わりの1冊、といったところか。

柔らかい女性的な文体、可愛らしいアイテム、たいてい少年少女が主人公で、魔法やファンタジックな設定ばかりが使われる・・・という作家の特徴から、ふわふわ、あまーい物語を思い浮かべがちですが、どの短篇もけっこうショッキングで刺激的、まさに「プリティ・モンスターズ」な物語たちです。どの短篇においても、死がものすごく近い場所にあり、それはまだ苦労知らずの若い読者にとっては、極上のスパイスとなりましょうし、大人の読者にとっては日常そのもの。変わり者ぞろいの登場人物の台詞に、いちいち「そうだよね」なんて頷いてしまうのは、私が変わり者の読者だからか、あるいはこの感覚、国籍、性別、年齢を問わない、誰にとっても近しい苛立ち・恐怖・幸福、なのか。死の気配濃厚な、不穏な題材ばかりを扱いながらも、読後感は悪くないので、リラックスして読めるのも良いですね。「シンデレラ・ゲーム」の兄妹が「サーファー」の兄弟と重なって、冷たいだけの物語に不思議な交流とあたたかみを感じたり。二人の少女の悲劇が同時進行していく「プリティ・モンスターズ」も、最終的に本と読者によって救われる・・・ようでもあったり。

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