他人の顔 (新潮文庫) の感想
254 人が閲覧しました
参照データ
タイトル | 他人の顔 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 安部 公房 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101121017 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
どういった読み方をすれば楽しめるか、本を読むときはそれを探しながら読んでいますが、仮面が完成したあたりで決まりました。これはお笑いとして読んだ方が辻褄が合いそうだな、と。なんせ最初から最後までひたすらボケてますから。仮面といえばオペラ座の怪人などがありますが、これはボケの怪人です。落語と評したのは延々と一人芝居をする落語があるからで、ボケ続けて終わるのか、それともツッコミが入るのか、どうやって終わるのかなと読んでいきますと、最後で嫁のツッコミが入ります。これがまた溜まった耳垢を掻き取ってくれるような代弁で、さすがこの男と一緒にいる女だなと。似たもの夫婦なんてありますが、かなり男と似通った思考回路をしています。それに反論する男がまた可笑しい。
同じ小説を繰り返し読みたくなる、その内の一冊がこの本だ。詩的な表現に何度も唸らされる。緻密なストーリーに引き込められる。「顔」といテーマに自分自身の顔と自分の周りの人間との顔、人間関係、顔のしたの素顔へと連想が膨らんでいく…。
現代の作家で読者を圧倒する作家がどれくらいいるだろう。自分を圧倒しない小説を読む気には私はならない。私のとっての小説の基準は、常に安部公房である。
現代の作家で読者を圧倒する作家がどれくらいいるだろう。自分を圧倒しない小説を読む気には私はならない。私のとっての小説の基準は、常に安部公房である。