毒 (PHPサイエンス・ワールド新書) の感想
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参照データ
タイトル | 毒 (PHPサイエンス・ワールド新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 船山 信次 |
販売元 | PHP研究所 |
JANコード | 9784569802855 |
カテゴリ | ジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » その他 |
購入者の感想
本書の副題『青酸カリからギンナンまで』とあることや、このページの上の「商品の説明」に「身の回りは毒であふれている。食べ物や嗜好品に含まれる毒から歴史のひとこま……毒にまつわる事故や犯 罪まで幅広く紹介」とることからすると、些かセンセーショナルなイメージが浮かぶが、本書は「青酸カリ」や「アルカロイド」等の代表的な化学物質に留まらず、毒性物質の基本的解説から、毒の種類・作用、歴史事実(犯罪)に見える毒、食品の毒(動植物)、毒に依る事故や注意事項、毒に依る犯罪事件、「麻 薬」の原理と作用など、幅広く身近な動植物や食品類、事件・事故に関するトピックを化学的(科学的)に紐解いていくものである。各トピックでは必要に応じて化学構造式なども掲示される、論述では専門的な解説も展開されるが、細かな側面まで理解しなくても大きな支障にはならないと思う。本書の構成・内容詳細については、「なか見!検索」ができるので、本稿では特に取り上げず右に譲る。以下では特に個人的に興味を惹いたトピックについて幾つか紹介したい。
全てのトピックが興味深いと言えるのだが、その中でもやはり興味を惹くのは、第4章の身近な「食べ物と毒」であろうか。ワラビ、フキノトウの毒性(多くは灰汁抜きで分解される)、そして副題にも見える「ギンナン」である。特に「ギンナン中毒」については、実例が報告されており、「嘔吐、下痢、めまい、両上肢の振戦、悪寒」といった症例があると言う。このほか、「ペットにチョコレートを与えるのは間違い」と注意を喚起している。また第5章では「毒による事故」の例を取り上げ、例えば「スイセン」(葉をニラ、球根を玉ねぎと間違えた実例)、「アジサイ」(料理の盛り付けに葉を使用)などに依る中毒症例が解説されている。身近な実例だけに覚えておきたい事情である。これら以外には第3章の「歴史」編も興味深いが、特に「華岡青州と通仙散」では、華岡青州の「全身麻酔薬」の開発(生体実験)の経緯にも言及があるが、詳細は有吉佐和子の『華岡青州の妻』が小説ながら、この生体実験を題材にしている(但し実情は小説のような妻と姑の対立・献身という構図はフィクションとされている)。全体にいずれのトピックも興味深く、広くお薦めできる一冊だろう。
全てのトピックが興味深いと言えるのだが、その中でもやはり興味を惹くのは、第4章の身近な「食べ物と毒」であろうか。ワラビ、フキノトウの毒性(多くは灰汁抜きで分解される)、そして副題にも見える「ギンナン」である。特に「ギンナン中毒」については、実例が報告されており、「嘔吐、下痢、めまい、両上肢の振戦、悪寒」といった症例があると言う。このほか、「ペットにチョコレートを与えるのは間違い」と注意を喚起している。また第5章では「毒による事故」の例を取り上げ、例えば「スイセン」(葉をニラ、球根を玉ねぎと間違えた実例)、「アジサイ」(料理の盛り付けに葉を使用)などに依る中毒症例が解説されている。身近な実例だけに覚えておきたい事情である。これら以外には第3章の「歴史」編も興味深いが、特に「華岡青州と通仙散」では、華岡青州の「全身麻酔薬」の開発(生体実験)の経緯にも言及があるが、詳細は有吉佐和子の『華岡青州の妻』が小説ながら、この生体実験を題材にしている(但し実情は小説のような妻と姑の対立・献身という構図はフィクションとされている)。全体にいずれのトピックも興味深く、広くお薦めできる一冊だろう。
オリジナルは2012年6月1日リリース。電子版は同年6月6日リリース。著者船山信次氏は、1951年生まれの薬学博士。2009年8月4日には、爆笑問題の番組『爆問学問』の『FILE082:「ヒトと毒薬」』に出演されたので観た方もいらっしゃるだろう。
読んでいて驚くのは、まるで巨大な『立方体』のような『毒』に対する知識である。古代クレオパトラから現代の殺人事件までを網羅する一方で、単なる毒だけでなく、二酸化炭素のような普通は『毒』とは認識しないものまで細かくかつ奥深く『素性』を解説してくれる。理路整然としていながらシロウトにも分り易い語り口に読むほどに惹き込まれた。
特に、日常生活で『毒』でなく『薬』として認識しているものの中に、気をつける必要が有るものがたくさんあることに驚いた。特に気になった点をいくつか列記してみると、
・きのこ中毒は、天然の毒による中毒の70%を占め、死亡例の60%を占めている
・グレープフルーツジュースを飲んだ直後に、ある種の薬を飲むことは避けなければならない
・納豆と高血液凝固剤のワルファリンは相性が悪い
・毒草として有名なトリカブトの塊根を減毒処理しているが『八味地黄丸』に配合されている
・小柴胡湯には肝障害・間質性肺炎を引き起こし、中毒死するケースがある
・ドクダミの葉にはフェオフォルバイドaという成分が有り、この化合物が体内にあるとき日光に当たると、光化学反応を起こし、皮膚に障害が起こる
など、読んでいて感心することばかりだ。
ミステリー好きの方はあのアガサ・クリスティが薬学の知識があって、その小説にたくさん生かされていることを知ってらっしゃる方も多いだろう。例えば『蒼ざめた馬(The Pale Horse)』に使われたタリウムなどが有名でこの本にも登場してくる。そういったミステリーや実際の事件の『種明かし』を詳しくされているような内容も盛りだくさんで、ミステリー好きにはたまらなく面白い。内容の濃さに圧倒されました。素晴らしい。
読んでいて驚くのは、まるで巨大な『立方体』のような『毒』に対する知識である。古代クレオパトラから現代の殺人事件までを網羅する一方で、単なる毒だけでなく、二酸化炭素のような普通は『毒』とは認識しないものまで細かくかつ奥深く『素性』を解説してくれる。理路整然としていながらシロウトにも分り易い語り口に読むほどに惹き込まれた。
特に、日常生活で『毒』でなく『薬』として認識しているものの中に、気をつける必要が有るものがたくさんあることに驚いた。特に気になった点をいくつか列記してみると、
・きのこ中毒は、天然の毒による中毒の70%を占め、死亡例の60%を占めている
・グレープフルーツジュースを飲んだ直後に、ある種の薬を飲むことは避けなければならない
・納豆と高血液凝固剤のワルファリンは相性が悪い
・毒草として有名なトリカブトの塊根を減毒処理しているが『八味地黄丸』に配合されている
・小柴胡湯には肝障害・間質性肺炎を引き起こし、中毒死するケースがある
・ドクダミの葉にはフェオフォルバイドaという成分が有り、この化合物が体内にあるとき日光に当たると、光化学反応を起こし、皮膚に障害が起こる
など、読んでいて感心することばかりだ。
ミステリー好きの方はあのアガサ・クリスティが薬学の知識があって、その小説にたくさん生かされていることを知ってらっしゃる方も多いだろう。例えば『蒼ざめた馬(The Pale Horse)』に使われたタリウムなどが有名でこの本にも登場してくる。そういったミステリーや実際の事件の『種明かし』を詳しくされているような内容も盛りだくさんで、ミステリー好きにはたまらなく面白い。内容の濃さに圧倒されました。素晴らしい。