奇跡の海 無修正 HDニューマスター版 (〇〇までにこれは観ろ! ) [DVD] の感想

262 人が閲覧しました

時間は長い作品だが、そう感じさせることはない。
その理由は、物語の結末が複数暗示されることにあるのかもしれない。
　
物語は、神の存在を探究する。
スコットランドの、海辺の小さな村の、カトリックの信仰が厚い人々を描いている。
教会に集い、神の掟に厳格に従って生きる人々である。

結婚したばかりの若い女性、ベスもその１人である。
ところが、ベスの夫、ヤンは仕事中に起きた事故が原因で、全身麻痺の体になる。
ベスは、仕事で家を出たヤンを早く帰してほしいと、神に祈っていたのである。
その祈りに神が応え、ヤンをベスのもとに早く帰すために事故を起こしたのではないか、とベスは考える。
ヤンが全身麻痺になった原因は自分にある、とベスは自分を責める。

一方、ヤンは全身麻痺のために、ベスを愛していても、抱くことができない。
その苦しみを告白されたベスは、悩む。
ようやく決断したベスは、愛する夫を救うために、行動する。
他の男と寝て、そのことを詳細に報告し、夫の歪んだ欲望を叶えようとするのである。

やがて、ベスは売春婦呼ばわりされ、教会から追放される。
しかし、ベスは夫の欲望を叶え、その愛に応えることによって、夫を救うことができると信じている。
それは、ベスの贖罪でもある。

生命さえ危うい、全身麻痺のヤンが回復するような、神による奇跡は起きるのか。
神は、生命をかけたベスの贖罪を讃えるのであろうか。
ベスに救いは、あるのか、ないのか。

いずれにしても、心が激しく痛む。

なお、本作をみたら、次もみてほしい。
タル・ベーラの「ニーチェの馬」である。
２つの作品は、コインの裏表のような関係にあると思える。