日米〈核〉同盟――原爆、核の傘、フクシマ (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル日米〈核〉同盟――原爆、核の傘、フクシマ (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者太田 昌克
販売元岩波書店
JANコード9784004314981
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

素晴らしい内容である。この国の未来を真剣に考える者にとって、本書は大変良い資料になると思う。

私はこれまで「日本の原子力政策とアメリカ」というテーマについて、『日米同盟と原発』や『原発と原爆』をはじめ50冊近くの原発関連の本を読み考えてきた。本書『日米〈核〉同盟』は、「日本の原子力政策とアメリカ」という問題の本質・真実に最も迫っている本であると私は考える。

本書は内容的に大きく1〜4章までの前半と5・6章の後半に分けられる。前半では3.11の福島原発事故を巡るアメリカの対応、そして近年まで国民に明らかにされてこなかった核密約を巡る日米のやり取りが詳細に説明される。

本書の白眉は後半の5・6章である。そこでは、

(1)1956年以来「国策民営」として進められてきたこの国の核燃料サイクルが、決して推進一枚岩ではなく、当初から官民双方に懐疑論・慎重論の存在するプロジェクトであったこと

(2)盟主アメリカが日本の核武装を警戒し、生殺与奪の権利を握り続けてきたこと(そしてもちろん現在も)

(3)核燃料サイクルの巨大な非合理性に危機感を抱いた若手官僚が存在し、彼らが内部告発という行動に及んだこと

などが、多くの関係者の証言とともに明らかにされている。

‘’国策民営‘’

「国」が青写真を描き、「民」がこれに従う。この本来的に主体が曖昧な体制として始まったがために、明らかな非合理性に気づきながらも誰もその最終的な責任を引き受ける主体が存在せず、「今さらやめられないから」という信じがたい理由で継続される核燃料サイクル。本書を読みながら、私は二度の原爆投下と敗戦という状況に「今さらやめられないから」となし崩し的に突き進んでいった第二次大戦中の日本の政権中枢を何度も想起した(cf.満鉄全史 「国策会社」の全貌

素晴らしい内容である。この国の未来を真剣に考える者にとって、本書は大変良い資料になると思う。

私はこれまで「日本の原子力政策とアメリカ」というテーマについて、『日米同盟と原発』や『原発と原爆』などの本を読み考えてきた。本書『日米〈核〉同盟』は、「日本の原子力政策とアメリカ」という問題の本質・真実に最も迫っている本であると私は考える。

本書は内容的に大きく1〜4章までの前半と5・6章の後半に分けられる。前半では3.11の福島原発事故を巡るアメリカの対応、そして近年まで国民に明らかにされてこなかった核密約を巡る日米のやり取りが詳細に説明される。

本書の白眉は後半の5・6章である。そこでは、

(1)1956年以来「国策民営」として進められてきたこの国の核燃料サイクルが、決して推進一枚岩ではなく、当初から官民双方に懐疑論・慎重論の存在するプロジェクトであったこと

(2)盟主アメリカが日本の核武装を警戒し、生殺与奪の権利を握り続けてきたこと(そしてもちろん現在も)

(3)核燃料サイクルの巨大な非合理性に危機感を抱いた若手官僚が存在し、彼らが内部告発という行動に及んだこと

などが、多くの関係者の証言とともに明らかにされている。

‘’国策民営‘’

「国」が青写真を描き、「民」がこれに従う。この本来的に主体が曖昧な体制として始まったがために、明らかな非合理性に気づきながらも誰もその最終的な責任を引き受ける主体が存在せず、「今さらやめられない」という理由で継続される核燃料サイクル。本書を読みながら、私は二度の原爆投下と敗戦という状況になし崩し的に突き進んでいった第二次大戦中の日本の政権中枢を何度も想起した。

ただ他方で、「潜在的な核武装能力を保持する」という面が存在する(というよりもそれこそが最大の推進理由なのだとは思うが)ことも当然考慮しなければいけないだろう。私自身この1点のために、核燃料サイクルを本当に完全に放棄すべきかどうか、本書を読んだ今でも結論が出せずにいる。

‘’二重の困難性‘’

 日本は過去4回にわたって凄惨な被爆を体験しています。広島、長崎、第5福竜丸、そして、2011年3/11の東電福島第一原発事故・・・・ 
 そのうちの3回は、米国によるものです。そんな加害国、米国と、被害国、日本、対極的な立場にある両国ですが、
 現在、この2国は、「日米同盟」で、軍事、政治、そして、経済で深く結びついています。さらに、この同盟はまた、核の同盟でもあります。
 著者の太田昌克さんは、早大卒業後、共同通信社に入社、以来、核兵器の問題をウオッチし、取材を続けてきました。
 本書は、そのような太田さんが、日米の膨大な公文書、関係者への取材を駆使し、核の軛につながれた、
 日米の同盟の実態をあぶりだしています。全体は、下記の5章に大別されています。
 第1章:フクシマとアメリカ   第2章:「3・11」、もう一つの教訓   第3章:盟約の闇   第4章:呪縛の根底
 第5章:「プルトニウム大国」ニッポン   第6章:もう一つの神話
 最近、吉田調書の内容が一部明らかになってきて、3・11事故発生当時の、東電の対応、政府の対応、
 そして、米国の対応が明らかになってきています。米国は、事故後、NRCと通じて、最悪のシナリオなど各種の情報を、
 日本に提供しています。また、CMRTを日本に派遣しています。それに対し、政府の対応は・・・・・・
 また、日本は、核に対し、持たず、作らず、持ち込ませず、の非核三原則を国是としていますが、その一方、日米同盟で、
 米国の核の傘により守られています。問題は、核を持ち込ませない という点にあるようですが、
 この点に関しては日米の密約が存在し、太田さんは、この問題を公文書、関係者へのインタビューを駆使し、明らかにしています。
 また、日本は、米国の後押しもあり、原発を国内に50基展開してきましたが(相当多いです)、問題なのは、増え続けるプルトニウムです。
 米国は、プルサーマル、高速増殖炉の稼働を前提に、再処理という特権を日本に与えていましたが、3・11の事故後、

日米同盟は、日米核同盟として、アイゼンハワーの平和核利用戦略という、実は軍事核兵器を使用可能にし続けるための欺瞞であることが分かります。また、核=原子力は、冷却装置稼働における石油などの枯渇燃料の最悪の浪費であり、小泉などの偽脱原発派は石油利権の為に反原発勢力を分化させる役割で動いている事も分かります。さらに、福島では、実はサイロイド(甲状腺)系のガンが多発していますが、政府は隠蔽している事も分かります。例えるならば、日米核同盟は、全体としての日米同盟という蛸の異なった足です。核問題、原子力発電問題、日米同盟問題は全て不可分に関連しており、単に抽象的に原発に限定せず、本書のような体系的な考察が必須です。

本書の独自性を如実に示す秀逸な分析箇所の一つを以下に紹介します。そこでは、なんと原発問題、核武装問題、日米核同盟問題と日米同盟全体の重要問題の一つである独裁者安倍による集団的自衛権行使の問題が不可分のものとして体系的に見事に分析されています。また、以下の箇所から著者の思想的立場、本書の核心部分を把握できます。

「それにしても、安倍政権の押し進める解釈改憲によって日本の自立的傾向が一気に強まり、それが被爆国による独自核武装のシナリオにも発展しかねない、そんな一抹の不安がオバマ政権には残っていないか。オバマ政権一期目にホワイトハウス調整官として米国の核政策を統括したゲイリー・セイモアと2014年6月、この点を巡って意見交換した。彼は『日本の強力な反核世論』が日本の独自核武装に対する重大な歯止めになるとの見方を示し、冷戦が依然続いていたレーガン政権時代の議論が今日には必ずしも当てはまらないとの分析を披露してくれた。『集団的自衛権行使=自立化=独自核武装』という単純な方程式は今や成立し得ないので、日本の集団的自衛権行使を容認しても問題ない。むしろ日米同盟の強化につながり、そのことは財政事情が逼迫する米国の負担軽減にもつながるー。こんな盟主の算段が、オバマの集団的自衛権行使への支持表明を可能にしたのだろう。」(PP.236-237)

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