歌仙の愉しみ (岩波新書) の感想
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参照データ
タイトル | 歌仙の愉しみ (岩波新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 大岡 信 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784004311218 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩論 |
購入者の感想
本来文学は孤独で、厳粛で、大まじめな自己表現だと信じていた子規は、即興で、遊戯性のある合作連句を見下した。以降幾変転の後、今平成二十年弥生三月、この古風な歌仙を置き去りにせず岩波新書に仲間入りさせたことを是としたい。
それも、小説家丸谷才一を中心にして、詩人大岡信、歌人岡野弘彦という錚々たる文学者で巻いた歌仙八作品が紹介されていて、重厚で豪華な感じがする作品系列になっている。
発句 長夜ひとりぽつねんと酒の稽古する 玩亭(丸谷才一)
脇句 するする咽喉をとほる里芋 乙三(岡野弘彦)
第三 朝戸出に弓張月を仰ぎ見て 信(大岡 信)
大岡 里芋が脇で、「長夜ひとりぽつねんと」と大変うまく合っている。秋の場合は第三が
「月」ですが、里芋の世界から離れて、どういう世界にいくか。月というのを出すのはなかなかむずかしい。
(第三)するする咽喉を通っていく里芋をゆうべ食った、そういう人が朝早くにどこかへ出掛けなければならない。それで「朝戸出に」というかたちにしたんです。
丸谷 これ、万葉語ですか。
大岡 万葉語だと思います。「朝戸出に」という古語を使うと、月も「弓張月」ぐらいにしないと緊張感が保てない。
このようにして、微妙に、付かず離れず、連句が展開していく作品形成の跡を追っているのが本書である。単に作品だけを並列したものではない。
大岡信を宗匠挌にして岡野弘彦、丸谷才一の三吟で巻くことが多いらしい。三人三様であることが作品の幅を広くする。
一番大事にするのは詩情であるという。文学としてのおもしろさをいい加減にして官僚的に式目を守ったって始まらないよ、という気持ちが三人に共通してある。一夕の座興でありながら、しかも共同作品を残したいと願っているという。
それも、小説家丸谷才一を中心にして、詩人大岡信、歌人岡野弘彦という錚々たる文学者で巻いた歌仙八作品が紹介されていて、重厚で豪華な感じがする作品系列になっている。
発句 長夜ひとりぽつねんと酒の稽古する 玩亭(丸谷才一)
脇句 するする咽喉をとほる里芋 乙三(岡野弘彦)
第三 朝戸出に弓張月を仰ぎ見て 信(大岡 信)
大岡 里芋が脇で、「長夜ひとりぽつねんと」と大変うまく合っている。秋の場合は第三が
「月」ですが、里芋の世界から離れて、どういう世界にいくか。月というのを出すのはなかなかむずかしい。
(第三)するする咽喉を通っていく里芋をゆうべ食った、そういう人が朝早くにどこかへ出掛けなければならない。それで「朝戸出に」というかたちにしたんです。
丸谷 これ、万葉語ですか。
大岡 万葉語だと思います。「朝戸出に」という古語を使うと、月も「弓張月」ぐらいにしないと緊張感が保てない。
このようにして、微妙に、付かず離れず、連句が展開していく作品形成の跡を追っているのが本書である。単に作品だけを並列したものではない。
大岡信を宗匠挌にして岡野弘彦、丸谷才一の三吟で巻くことが多いらしい。三人三様であることが作品の幅を広くする。
一番大事にするのは詩情であるという。文学としてのおもしろさをいい加減にして官僚的に式目を守ったって始まらないよ、という気持ちが三人に共通してある。一夕の座興でありながら、しかも共同作品を残したいと願っているという。