夢の痂 の感想

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参照データ

タイトル夢の痂
発売日販売日未定
製作者井上 ひさし
販売元集英社
JANコード9784087748352
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

『夢の裂け目』『夢の泪』そして本書と続く、東京裁判三部作。この一文は、この三部作を対象にして書きました。

本書の「あとがきに代えて」で、著者の東京裁判に対する考えは直截に書かれています。そこでは、東京裁判が持つ問題点(事後法・勝者の裁き・アメリカの占領政策との関連など)にも触れ、さらに著者自身が考える東京裁判の“瑕”(裁かれるべき人が裁かれなかったこと・日本国民が不在であったこと)が指摘されています。そこには、事後法や勝者の裁きだけを批判する人がほとんど触れない点にも言及されています。

では、著者は三部作の中で、そういった点を含めて描いたのか。私自身は、ほぼ描けていたと感じます。『夢の裂け目』では、一部軍人や政治家だけを裁くことによって、日本の支配構造に迫らない裁判を、紙芝居屋に携わる人々の生活と絡ませています。また、『夢の泪』では、被告の弁護人になった弁護士たちを描く過程で、裁判の証拠が隠滅・隠匿されていたことを指摘しています。そして、本作では、東京裁判の“と”の字も出てきませんが、本来責任を取るべき人・謝罪をするべき人は誰だったのか、が描かれます。

当時の日本人の多くは、食べること(正確に書くと、飢えないこと、でしょう)に必死でしたし、政治にも関わることが少なかった(関わらしてもらえなかった)戦前の状況もあり、著者の指摘するように、東京裁判と国民の関係は希薄だったと思われます。同様に、現代に生きる人々にも、時間の壁ゆえ、東京裁判との直接的な関係は見出し難いのかもしれません。ただ、この三部作で描かれたように、実際は様々な局面や状況で、その接点を見出す可能性は充分にあったと思われます。ということは、現代に生きる私たちにも、その可能性も充分にあるということではないでしょうか。

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