反逆する風景 (鉄筆文庫) の感想
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参照データ
タイトル | 反逆する風景 (鉄筆文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 辺見 庸 |
販売元 | 鉄筆 |
JANコード | 9784907580018 |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » は行の著者 |
購入者の感想
辺見庸氏のベストセラー『もの食う人びと』が陽だとしたら、本書は陰である。
『もの食う人びと』は大衆受けするように書かれている感が否めないが、本書はいわゆる辺見庸氏らしい文体で書かれた作品になっている。
人間というものは自分ばかりでなく、他人の行動やとある場所にあるもの、そして自分の目の前にある風景にさえ意味を持たせようとする。しかし、無意味な行動やものもあるのではないか…
本作品を読んだら、意味という桎梏から解き放たれ、なにか軽くなったような気して、気分爽快になるだろう。
ソレデハ…
『もの食う人びと』は大衆受けするように書かれている感が否めないが、本書はいわゆる辺見庸氏らしい文体で書かれた作品になっている。
人間というものは自分ばかりでなく、他人の行動やとある場所にあるもの、そして自分の目の前にある風景にさえ意味を持たせようとする。しかし、無意味な行動やものもあるのではないか…
本作品を読んだら、意味という桎梏から解き放たれ、なにか軽くなったような気して、気分爽快になるだろう。
ソレデハ…
講談社文庫では絶版になっていた名著が、ついに復刊された。帯にある通り、本書はまさしく『もの食う人々』と表裏をなす一冊であり、これを読まなければ『もの食う』の面白さは半減すると言ってもいい。1990年代に書かれたにもかかわらず、ここに記されている風景はほとんど現代を予見して描いたタブローのように、2014年の日本、世界に向けて鮮やかに立ち上がってくる。一例が「ファシストのいる風景」(91年)。思想は右も左も混沌として溶け出し、ただ危険な民族排外主義のみが残るという、筆者が予感した未来は世界の、日本の今ではないのか。いや、とにかく、まずは表題作を読んでほしい。単行本の刊行当時、ジャーナリストを志す人々、ものを書く仕事を志す人々に、ほとんどバイブルのように読まれていたのを思い出す。私は世界とどう向き合い、見、書くのか。都合よく解釈される「意味」などに整合しない、矛盾や無意味を含み持つ風景をこそ記さねばならない、という名文は何度読み返しても鳥肌が立つ。若い世代もきっと共感できる。最終章の書き下ろし「遺書」には、さらにここから先に出現するだろう戦慄の風景がスケッチされている。この価格で1章分の新しいエッセイまでついてくる。絶対にお薦めの1冊。