新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書) の感想

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タイトル新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)
発売日販売日未定
製作者石原 慎太郎
販売元新潮社
JANコード9784106104268
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

 私は売れているという本よりも文学や哲学の古典をよく読むが、たまに話題の新書も読むことがある。数年前ベストセラーになった藤原正彦『国家の品格』は、当時はインパクトがあったし、私も共感する部分があった。勝間和代『お金は銀行に預けるな』も、投資信託の入門として読めるものだった。それぞれ星3つくらいは付けてもいいだろう。
 ところがこの本は、核保有にしろ消費税増税にしろ、それに反対しそうな読者を説得しようとする努力が見えず、書物としての役割をなしていない。しかも随所に見られるご都合主義な知識もかなり眉唾物である。例えば、

「大脳生理学的にいえば異民族の混血は優れた人材を多く生むそうですが、徳川二百年の鎖国は限られた国土の中での徹底した混血をもたらしました。[…]そういう意味では、日本はアメリカ合(衆)国よりはるかに早い多民族国家といえる」

 鎖国をすることで一定な期間(それも「二百年」という長い期間)外から入る異民族が制限されるというのに、それがどうして「徹底した混血」をもたらすのだろうか? しかも生まれてから歴史の浅いアメリカと比較するのでは、早いのも当たり前である。

 また最近の若者に対する認識がステレオタイプすぎる。それもそのはず、「しかし今の若い世代には、傾聴とまでいかずとも、聞いて気になるような何らの主張が一向にうかがえないし、新しい情操情念も感じられはしない」と述べるとおり、「若い世代」は著者にとって理解不能なものでしかないのである。ほんらい本を書くとか読むということは、理解不能なものでもなんとか理解しようとし、そのうえで賛成なり反対なりを表明するもののはずだ。ところがこの本の著者は、はじめから日本人は堕落したという結論が出ており、意見の対立する読者とはコミュニケーションをとるつもりがない。これこそ著者が非難する「我欲」そのものではないだろうか。私はこの本を最後まで読んだうえで反論しているが、きっと著者は私が何か言っても「何らの主張が一向にうかがえない」と言って理解しようとはしないだろう。

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