ライトノベルから見た少女/少年小説史: 現代日本の物語文化を見直すために の感想

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タイトルライトノベルから見た少女/少年小説史: 現代日本の物語文化を見直すために
発売日販売日未定
製作者大橋 崇行
販売元笠間書院
JANコード9784305707437
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

明治期以降の少年/少女小説からの連続性(江戸文芸への言及もあり)でライトノベルを捉えるという試み自体は非常に魅力的である。
しかし少年小説とまんがとのつながりは佐藤紅緑『あゝ玉杯に花うけて』の野球の場面が『アストロ球団』などに連なるという例、アニメとのつながりは高垣眸の『熱血小説/宇宙戦艦ヤマト』という例から説明されていたが(これにしたって何か特殊な例という感じはするが)、肝心の少年小説とライトノベルのつながりは、どちらもキャラクター小説であって、お嬢様言葉とか少年の使う「僕」、博士キャラの使う「~じゃ」という語尾など役割語が共通しているという話以外、まったく具体例が無い。
お嬢様言葉は半ばは少女小説の話で、大橋氏の少年向けレーベルと少女向けレーベルをひとくくりにすべきではないというテーゼに反しているし、「僕」や「じゃ」を使うのはエンタメ小説に限った話ではない。
初期のまんがや絵物語で、イラストが文章の補助として書き加えられるからライトノベルと同じ作り方だ、などと言うのは、いくらなんでも牽強付会だろうし。そんなことはふつうの小説の挿絵でも全く同じではないか。
少女小説に関しては、吉屋信子『花物語』・川端康成(中里恒子)『乙女の港』などが今野緒雪『マリア様がみてる』に直結するという分かりやすい話があるほか、《女学生の友》から「ジュニア小説」が生まれ「ジュニア小説」からコバルトが生まれるという系譜もよく書けているのだが。
大橋氏が少女向けレーベルをライトノベルと呼ぶことを疑問視するのは、ラノベ1990年誕生説を否定することから来ているのだが、パソコン通信の電子会議室から「ライトノベル」という用語が生まれた事実性まで否定できるわけではなく、やっきになって否定する必要があるのか不思議に思った。
大森望らの70年代ラノベ起源説をも否定しているのだが、少年小説がまんがなどに押されて一時途絶えたことを通史で認めてしまっており、見方を変えれば70年起源説を補強することにもなりそうだ。
少年小説からまんが・アニメを通じてラノベに影響したという論旨と理解していいだろうが、それだけなら70年起源説と共存しても問題ないはずである。否定のための否定が多い気がする。

『日本のキャラクター文化言説の再編成を行う、刺激的な一書』(帯文)

 この帯文は決して誇張ではない。

 ライトノベルを固有の独立した媒体としてではなく、明治以降の少女/少年小説の延長線上として捉え、その特質を闡明にしている点は興味深い。

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