大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか の感想

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タイトル大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか
発売日販売日未定
製作者タイラー・コーエン
販売元エヌティティ出版
JANコード9784757123267
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

チェスでコンピュータと協業できる人が最強になるという例えがきわめて説得的な論理を展開している。
そして、人々は、大きな政府の福祉国家よりも、自分の可処分な金を保持する生き方を好むという点も説得的である。
(大きな政府が、人々の幸せに奉仕するためには、官僚機構が民主主義の原則に従って多数の市民に奉仕する公僕で構成されなければ不可能である。現状は原子力ムラ、土建ムラ、安保ムラなどの特定利権組織に国民の富が浪費されている。日本に多額の税金を市民の幸せのために使う官僚機構が実現できるとは思えない。高福祉社会は北欧の市民社会・官僚機構だからこそ成功しているのだ)

60年代・70年代という中流層が厚かった時代が特異な時代であって、中世のように格差が大きい時代に落ち着く(P.303)という説明も納得できる。日本でも、第二次大戦以前は過半数の農業従事者の間に地主-小作関係、都市でも少数の経営層(ホワイトカラー)と多数のブルーカラーがいた。
その階層が、生まれや幸運によって位置づけられていたのが、機会は均等に与えられていて、あとは本人の集中意欲の有無によって成否が分けられる社会になる、ということも納得できた。

その他、政府の財政不均衡も解決しないだろうという予測も説得力がある。
総じて、平易に洞察を説いているからこそ、力がある。
現実を見るにつけ、パンとサーカスの時代は古今東西不変なのかと思ってしまう。

 これからの世界は「賢い機械(Smart Machines)」とともに働ける、向上心のある15%の人間と、それ以外の人々という二極化し、原題のようにAverage Is Overとなると予測をしています。

 《私たちは財政均衡のために税金を大幅に引き上げることも、社会保障給付を大幅に減らすこともせず、その結果として、多くの働き手の実質賃金が下落し、新たな下層階級が出現する。それを回避する手立ては、おそらく見いだせない》とディストピアとまではいわないまでも悲観的な見方をしていますが、《けれども、その未来は奇妙に平穏な時代だ》といいます(p.308)。最終章をまとめてみると、富裕層に対する増税は行われるようになっても財政悪化は避けられず、貧困層向けの社会保障や医療サービスが削減されるが、投票率が高い高齢者向けは温存される、と。なぜなら、貧困層向けに税金を使うより教育、インフラ、司法、警察に使う方が有権者の受けがいいから。《アメリカで障害年金を受給している人の数は、10年前は500万人だったが、いまは820万人。コストは1150億ドルで、全世帯が150ドル以上負担。今日の仕事の世界で職に就くより、障害年金を受給する以上の魅力を感じられない人が増えているとはいえそうだ》というのですから遅かれ速かれ歯止めが必要でしょう(p.64)。

 その結果、貧困層はカネをかけずに生活できる安い土地へ移住する。自治体はそうした土地のインフラ整備、医療サービスには予算をかけられないが、無料のインターネットサービスを提供して退屈させず、医療費負担を減らすためにもジャンク・フードを食べるのを止めさせ、運動を奨励するようにすべきだ、と。

 しかし、こうした悲観的な世界でも、社会改革は起こりそうにもない、と。なぜなら、保守主義が最も強いのは所得と教育水準が最も低く、ブルーカラー労働者の割合が最も高く、経済状況が最も厳しい地域だから、と。

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